特集 日本の屋台骨を再構築する 生産現場を支える「ものづくり人材」の育成
「六重苦」ともいわれる状況に置かれ、グローバル競争で苦戦を強いられている日本の製造業。日本企業のプレゼンスを再び取り戻すためには、戦略的な舵切りと、現場力の維持が不可欠だ。うち、「現場力」とは、生産現場を支える中核人材たちが発揮する力である。これまで日本の強みといわれてきた現場力も、それを維持する人材がいなければ、衰えていく一方なのだ。変化の時代を生き抜き、ものづくりの将来を支える彼・彼女らには、どんなことを、どんなふうに高めてもらえばよいのだろうか。また、それを支援する企業側の具体策とは。
日本の製造業が抱える危機感
日本の基幹産業として、経済を牽引してきた製造業。しかし、東日本大震災と電力不足、円高、韓国や中国企業を中心とするアジア諸国勢の台頭、そして団塊世代の熟練技能者の一斉退職など、「六重苦」ともいわれる状況に置かれ、グローバル競争で苦戦を強いられている。
生産のグローバル化が進展しているとはいえ、日本のものづくりは、依然として世界最先端である。そして、そのノウハウは現場が生み出してきたものだ。
しかし、今後のノウハウ、技術の伝承、そして現場力の維持に、日本のものづくり企業は不安を感じているようだ。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の2011年の調査※1でも、60.8%の企業が、生産現場の中核を担う人材が不足していると答えているのである。
中核人材とはどんな人材なのか
中核人材(中核的技能者)とは、具体的にはどういう能力を持つ人材かといえば、以下の能力が上位3位に挙げられている(前出調査、P40、Opinion②藤本真氏ページ参照)。
○「製造現場のリーダーとして、ラインの監督業務や、部下・後輩の指導を担当できる」能力
○「製造現場で多くの機会を受け持ったり(多台持ち)、複数の工程を担当できる(多工程持ち)」能力