連載 金井壽宏の「人勢塾」に学ぶ。試す! 人と組織の元気づくり 第4 回 人と組織の元気づくり 第4 回「ドラム・サークル」
成熟社会。正解のないビジネス現場。社内のコミュニケーション不足――これらの課題に、即効性のある薬などないことは、誰もが感じているだろう。この状況に風穴を開ける術は、全くないのだろうか?その問いに挑むのが、神戸大学で金井壽宏先生が主催する第4期「人勢塾」。本誌では、「人勢塾」全10回の授業をレポート。施策1つで問題を解決するのではなく、組織全体へ多様なアプローチをする。そんな「組織開発」の手法を学び、ぜひ現場で試していただきたい。
「ノンバーバル」から学ぶ
「チーム力を上げる」ことは、組織開発には欠かせないものだ。第4回は、日本を代表するパーカッショニストであり、ドラムサークルファシリテーター協会理事長として学校や企業の研修現場に立つ、橋田“ペッカー”正人さんがゲスト講師。参加者が輪になって座り、ドラムでリズムを奏でるセッション「ドラム・サークル」を体験した。使うのは、打楽器と身体のみ。普段、言葉に頼っているビジネスマンにとって、ひと味違うグループ経験となった。
「古代人の智恵」に学ぶ
「今日は、古代人の智恵に学びます」とペッカーさん。
「5万年前、ホモサピエンスとネアンデルタール人、2 つの人類がいました。私たちの先祖は、ホモサピエンスです。ネアンデルタール人は体格が良いのに対して、ホモサピエンスは華奢。だから、グループをつくらないと生きていけなかったんですね。彼らは笛の音で癒し合い、仲間の絆をつくった。それで、ネアンデルタール人との種の保存競争に勝てたんです。現代社会におけるネアンデルタール人は……不景気かもしれない。祭りを行い、グループを強くして、楽しく乗り越えよう。古代人は、そう教えてくれます」
チーム形成のプロセスを体感
ドラム・サークルはチームビルディング研修によく使われる。なぜだろうか。理由の1つを「短時間でチーム形成のプロセスを体感できるから」と金井先生。たった数時間のセッション中に、チームが形成され始め、役割が発生し、混乱が起こり、行動規範が生まれ、一体感が湧く。ちょうど、タックマンのチーム形成から達成までのプロセス理論と重なる、というのだ。
「グループがグループらしくなるのには、たとえばプロジェクトチームなら結成されて数週間を要するかもしれません。今回のセッションでは、数時間で『我々はグループである』という実感が持てるはず。また、ペッカーさんからグループ活動のファシリテーションを学んだり、元気が出るとはどういうことかを味わってほしい」。
タックマン(B.W.Tuckman)のチーム形成プロセス理論
①Forming:チームが形成され始め、
②Storming:何かと目的、役割、責任に混乱が起こり、
③Norming:ともに行動する人の間で行動規範が生まれ、