~マネジャーを育て、現場での実行力を高める「対話の場」~ 成果が出る職場をつくる 現場の「やり抜く力」
経営改革の成否を分けるのは、改革を実行する現場の「やり抜く力」である。
だが現在、多くの会社で「やり抜く力」が低下している。
どうしたら「やり抜く力」を回復することができるのか̶̶
本稿では「対話の場」に着目し、その有効性を紹介する。
経営改革の成否を決める現場の「やり抜く力」
グローバル競争が激化し、国内市場が縮小する中、多くの会社は自社の勝ち残りを賭け、経営改革に取り組んでいる。しかし同時に、改革がなかなか進まないといった例も多く見受けられる。追い詰められつつある状況にも関わらず、なぜ改革が進まないのだろうか? 私たちは、現場の「やり抜く力」が低下しているために、改革が進まないのではないかと考えている。
現場の「やり抜く力」とは、「自らが決めたことを、自ら実行し、成果を出す力」のことである。特に部課長といったマネジャー層を中心とした現場に求められる。経営者が提示する経営ビジョンや方針がいかに理にかなっていたとしても、それを実行する現場に「やり抜く力」がなければ、成果が出るはずもない。私は数多くの会社の改革を支援する中で、この「やり抜く力」の源泉には2つあることに気がついた。1つは、働く人々の「モチベーション」であり、もう1つは高いスキルとモラル(意識や姿勢)を備えた「人財」である(図表1)。
現場の社員のモチベーションが高ければ、困難に直面したとしても、決めたことを粘り強くやり遂げようとする。また、高いスキルやモラルを備えた人財がいれば、難しい問題でも知恵を出し合い、成果を出すことができるのだ。反対に、「モチベーション」と「人財」のどちらが欠けても、改革はうまく進まないだろう。
改革が継続しない根本原因は「対話不足」にあり
一般的に、経営改革の実行に当たっては、まず経営者が経営ビジョンや方針を打ち出す。そして、それに沿って、各部門が目標を決める。目標を決めたら、それを達成するために現場で活動を行う。活動を行うと必ずさまざまな問題が生じるが、その問題に対し、現場で自ら解決策を導き出し、実行しなければならない。この一連の活動を「改善活動」と呼ぶ。しかしながら、このような現場の自主的な改善活動はなかなか継続せず、途中で立ち消えになりがちだ。当然、改善活動が継続しなければ成果は出ず、当初の目的であった経営改革には至らないのである。
私たちが、独自開発した「モチベーション調査」というメニューで、そのような会社の実態を複数調査したところ、現場の社員からは「自分の意見や考えをいう場がない」「上司は仕事の指示しかしない」「社長や上司の考えがわからない」「一生懸命やっても認めてもらえない」「仕事以外での上司との会話がない」といった声がよく聞かれた。こうした声からもわかるように、これらの会社や職場には、“対話”がないために、社員が仕事に対する納得感や共感、充実感を得ることができないのだ。これでは、モチベーションは上がらないうえに、人財も育つはずがない。そうなると当然、現場の「やり抜く力」も向上しないというわけである。
職場における対話不足の原因は、厳しい経営環境の中で際限なく効率を追求されることや、成果を厳しく求められることにより、多くのマネジャーが心の余裕をなくしているところにあるのではないだろうか。加えて、世代間格差による価値観の違いや、直接顔を合わせないメールなどのコミュニケーションツールの多用は、対話不足の傾向に一層拍車を