人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ vol.2 「無法松の一生」
『無法松の一生』は日本映画の名作の一つで、これまでに四度映画化され、その都度、時代を代表する大スターが主役を務めてきた。なかでも評価が高くて手軽に観られるのは、昭和33(1958)年に稲垣浩監督がメガホンを取り、三船敏郎が主役を演じた作品である。ベネチア映画祭で金獅子賞を取った。
話は明治30(1897)年から始まる。芝居小屋では日清戦争の武勇伝が大人気で、日本人という意識が生まれ始めていた頃である。国民の多くは小学校までしか行かず、今とは位置づけが違うとはいえ、中学を出れば高学歴だった。日本人の多くが文字通り庶民だったのだ。こういう時代背景を踏まえて観ると、この映画は一段と興味深いものになる。
主人公の松五郎こと無法松は、九州・小倉の車曳き(人力車曳き)だ。直情径行型で、芝居小屋に顔パスで入れてもらえなかった腹いせに客席で鍋を囲み、にんにくを焼いて乱闘騒ぎを起こしたりする。だが純粋で憎めない人間だ。