連載 ID designer Yoshikoが行く 第66回 ウィーンにて古きから新しきを学ぶ
久しぶりのウィーンである。ウィーン大学で博論を書いている友人から、学会発表をすると知らせが来たので、なにはさておき私が行かねば、と律儀に考えた次第である。
なんちゃって実は、ウィーンの秋を楽しむ大義名分ができたわ、とウキウキとやって来たのだが。
だって、今年のウィーンは特別なんですもん。
まず、甘美で妖艶な作品で女性の心をギュッと掴んで離さないグスタフ・クリムトの生誕150周年で、特別展示やミュージカルが目白押し。そして、ハプスブルグ家の巨大な富と権力を好き勝手に使いまくった美貌のオーストリア皇妃として、これまた全世界の女性の憧れを一身に集めるエリザベート、愛称シシィの生誕175周年でもあるのだ。
街のあちこちには、クリムトの「接吻」や「ユディト」を映したキラキラ輝く巨大な垂れ幕が下がり、滝川クリステルをさらに15度ほど右回転させたような「見返り美人」ポーズを取るシシィのポスターや公式グッズが溢れている。芸術の都が、華やかで成熟した大人のムードに染まって、街を歩くだけでロマンチックな気分に浸れるのである。
クリムトだってキュレーション・ビジネス
学会の発表を盛り上げるという重要な任務を終えた私と、「超人間化について」という小難しい発表をした当の友人A子、その研究仲間のオーストリア女子と、3人でさっそく街に繰り出し、国立歌劇場前の老舗ホテルのテラスで、生クリームたっぷりのザッハー・トルテをパクつく。さて、残るウィーンの休日をどう満喫しようかと作戦会議である。