人の縁と逆境が人を大きく育てる
ここ数年の飲料業界の市場規模は、
ほぼ横ばい。そうした状況の中で、
サントリーフーズの業績は好調を持
続。この10年、同社は1.4倍の成長
を遂げ、今や収益においてもグルー
プの中核を担う存在だ。だが、「好
調だからこそ、人づくりが大切だ」
と話すのは、人事部部長の斎藤恒存
氏である。不調の時、辛い時こそ、
現場で人が育つからだ。そう語る氏
は、常に人との縁を大切にしながら
数々の困難を乗り越えてきた。そし
て現在、“「人を育てる人」を育てる”
というトップからのメッセージに応え
るべく、日々人づくりに全力を注ぐ斎
藤氏に、教育への想いを伺った。
飽和状態にある市場で業界No.1をめざすために
斎藤恒存氏がサントリーフーズの人事部部長に就任したのは、2008年の時のこと。以来、サントリーフーズの人材育成施策の見直し、整備に携わってきた。2010年には、栗原信裕社長のトップメッセージとして“「人を育てる人」を育てる”を全社員に発信。新入社員教育の大幅改定をはじめ、中堅、管理職の教育にもメスを入れた。研修を企業風土改革につなげたい、と斎藤氏は話す。
その背景には、強い危機意識がある。販売シェア№1を誇る「サントリーウーロン茶」といった定番商品を数多く抱え、1997年以来、ずっと右肩上がりの成長を続けているにも関わらず、である。「うまくいっている時は、結果に結びつきやすいものです。知名度の高い定番商品についてはお客様も商品知識を持っておられます。なんとか相手にくらいつき、商品を買ってもらうというような痺れる経験をする局面を、今の若い社員は持ちにくいのです」
それが怖いと、斎藤氏は指摘する。少子化に伴って国内市場は今後、収縮を余儀なくされることは間違いない。サントリーグループは積極的なグローバル展開をめざしているものの、サントリーフーズは今後も国内市場を中心に勝負していく。すでに飽和状態にある飲料市場の中で、業界№1をめざすためには、自ら挑戦し、行動できる人材を育成しなければならない。「これまで高成長を続けてきた当社には、やるべきことは徹底してやり遂げるというDNAがあります。そこにどれだけ個人の想いを掛け合わせることができるかが大切なのです。我々には、そうした人材を育成したいという思いがあります」
サントリーフーズはサントリーグループの中核企業でもある。その意味でも、人づくりは大切だ。「私はサントリーが大好きです。ですから、次代のサントリーを担う人材を1人でも多く育てたい」と、斎藤氏は続けた。
青年の樹よすくすく伸びよ
斎藤氏が、サントリーに入社したのは1980年。世界で活躍する姿に憧れ、総合商社や都市銀行へも足を運んだ。希望通り、商社や銀行からも内定をもらうこともできたそうだ。ところが斎藤氏は、就職活動の1つとして訪れたサントリーで大きな感銘を受ける。「やってみなはれ」の精神もそうだが、その社是に強く惹かれたと話す。