経営学が人事・教育者の 強力な武器になる
人事・人材育成担当者は、企業の中で何を成す存在か?
さまざまな答えがあるだろうが、一番重要な役割は「経
営は人なり」を実現することである。その時に武器と
なるのは「経営学」の知識。経営をも経験した育成プ
ロフェッショナル、酒井穣のスペシャル誌上講座でその
武器を手に入れる。
経営の言葉を語る人事・教育者たれ
はじめまして。酒井穣です。「フリービット」という、特に技術力を強みとしたITベンチャー企業で戦略人事の仕事をしています。具体的には、人材育成、採用、人事制度改革、企業買収後のグループを越えた文化融合などを専門としつつ、日々いろいろな経験をさせていただいております。
縁あって『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』(光文社/刊)や『はじめての課長の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/刊)など、これまでに5冊の本を執筆してきました。もしかしたら本を通して僕の名前をご記憶いただいている方もいらっしゃるかもしれません。
今回、名誉なことに、この『人材教育』に連載誌面を頂戴しましたが、ここで僕が訴えたいのは、経営について、そして経営学について、より深く理解する人材育成担当者をもっと日本で増やしたい、ということです(傲慢なのは承知のうえで)。このことを説明するために、第一回の本稿では、この連載の「理念」についてお話しします。
人材の育成=経営理念の実現
連載の「理念」と申し上げましたが、これと定めた「理念」を実現し、その正当な対価として利益を得ようとするのが、世界にあまたある企業に共通する姿です。企業の「理念」とは、企業の理想であり、企業の存在意義であり、企業の価値観です。それは、そこに集う人々に共有されている「あるべき姿」と言い換えることもできるでしょう。
この「理念」が美辞麗句で飾られた広告のごとく形骸化し、結果として失われてしまった企業は、決まって業績を悪化させ、長期的な存続ができなくなります。従業員が個人的な保身に走り(部分最適化)、企業全体のこと(全体最適化)を考えられなくなる状態を特に「大企業病」といいますが、この根本的な原因は「理念」共有の失敗にあります。