ビジョン・バリューを全社的 対話で策定、共有・実践へ
日本を代表するメーカーの1社、NEC では、2007年から対話を通して
組織の活性化に取り組んでいる。具体的には、「めざす姿」としてのビジョンと、
「社員が大切にする価値観」としてのバリューを、
社員の「全員参加」の対話を通して策定。
さらに、それを共有し、個々人の実践につなげていく段階でも
対話を積極的に活用している。
2007年7月、NECグループはビジョンとバリューの策定に着手した。この策定に、同社では全社員による「対話」を重視。8カ月をかけて社内での対話を深めていったという。さらにその共有化、定着化においても全社的な対話集会を実施、海外グループ会社を含めた全世界で1人ひとりの理解を深め行動につなげるための対話を進めている。NECグループではどのように対話を成立させ、深めてきたのだろうか。
「何かおかしい」――ト ップが感じた違和感
「そもそものきっかけは、社長(当時、以下同)の矢野が感じた『違和感』でした」と語るのは、経営企画部グループマネージャーの小西勝巳氏。2006年、小西氏は矢野薫社長(現会長)とともに事業場や関係会社を回り、中期経営計画の説明会を開催していた。その中で社員から、「最近、会社がどこに向かっているのかわかりにくい」、「価値観が共有されていないのではないか」といった意見が随所で上がっていたという。当時のNECは、ITバブル崩壊後の立て直しを一通り終えた時期だった。事業構造改革や財務体質の強化などに注力した数年間である。しかしその一方で、短期的な業績ばかりにフォーカスする風潮が強くなっていたのではと小西氏は振り返る。さらに、関係会社ではコンプライアンス違反の問題が判明した。「何かおかしいぞ、と他の社員も感じていたのかもしれません。矢野も、組織の深い部分までかなりダメージを受けている、これは表面的な取り組みでどうにかなる問題ではないと感じたのだと思います」(小西氏、以下同)これらの状況を踏まえて矢野社長は、創業の原点に立ち返り、NECグループがめざす姿としての「ビジョン」と、社員が大切にする価値観としての「バリュー」づくりに、全社を挙げて取り組むことを決意した。「NECは1977年にC&C(コンピュータと通信の融合)宣言をし、その方針の下で事業をグローバルに拡大してきました。このコンセプトは今でこそ当たり前ですが、当時は先進的なものだったのです。“企業の寿命30年説”というものがあります。それによれば企業が本当に生きがよいのは10年までで、元気な優良企業でいられるのは30年まで、それ以降は活力が衰えていくといわれています。つまり30年サイクルで、さまざまな意味で“創業”をしている企業だけが、長寿企業として生き残っていけるのです。NECもC&Cというコンセプトを発表してから、2007年にはちょうど30年を迎えるタイミングでした。次の30年をどう切り拓いていくかを考えるべき時に来ていたのです」