企業事例2 トッパンフォームズ “教えることで教えられる”真のリーダー、メンターを生む指導員制度
先輩が後輩を育て、メンターシップを発揮することで自らもリーダーシップに目覚める――「育てながら育つ好循環」を見事につくり出しているのがトッパンフォームズだ。注目したいのは創業時から40年間続けている「指導員制度」。毎年4月初旬、入社3~10年目の先輩社員が新入社員と10日間、合宿。指導役を務める。そのユニークな取り組みの詳細と手ごたえを聞いた。
10日間の“感動ストーリー”を生み出せ!
ビジネスフォームのリーディングカンパニー、トッパンフォームズ。「情報」を核にさまざまなビジネスフォームを販売する情報ソリューション会社だ。1955 年に設立し、1965 年、凸版印刷とカナダのムーア・コーポレーションが合弁。以来、40 年あまりにわたり、続けてきたのが「指導員制度」だ。坂田甲一取締役 総務本部長は次のように説明する。「新人が学生から社会人へと変わるこの時期に、礼儀やマナー、同期意識や仕事に必要な基本行動力を身につけさせたい。そんな思いからスタートした試みですが、もうひとつ重要な意図があります。次世代リーダーの選抜と育成です。
指導員の対象階層は、ちょうど管理職の手前くらい。仕事面では、すでに一人立ちした時期ですね。人にものを教える時に必要なのは、知識だけではありません。結局、人間と人間のぶつかり合いですから、全人格的な要素が不可欠になってくる。先輩は指導員として後輩を教えることで学び、一回りも二回りも成長するのです。会社としては、指導員の体験を通し、彼らを立派なマネジャーに育成したい。優秀な次世代リーダーを発掘したい、という狙いもある。普段は見過ごしがちなリーダーシップの萌芽も、こうした場で発見することができます」
指導員の役割は、ただ新人の合宿に付き添い、見守る、というものではない。能力開発部が決めた、ビジネスマナー研修、ウォークラリーといったプログラムの進行や内容についてそれぞれ担当を決めて討議。当日は講師や指導役となる。
また、講義だけではなく生活指導も行う。新人6 ~ 7人の部屋毎に1人ずつ指導員がつく。風呂の入り方、トイレの使い方など、細々とした立ち居振る舞いに至るまでを教え、行動規範を身につけさせるのだ。
指導員は人物や業務態度を勘案したうえで選抜される。人数は新入社員6 ~ 7名に1人程度。2012年度は新入社員42 名に対し、リーダー役のチーフが1名、サブチーフおよび一般指導員7名が選ばれた。
――年末年始の休暇が明けたばかりの1月中旬、指導員全員の初顔合わせが行われる。これから4月の合宿までの3カ月間、力を合わせて準備を進める。しかも、現業と兼務しながらである。
準備に当たり、指導員たちは自分たちだけで合宿を行い、講師訓練や朝礼・夕礼の模範訓練を行う。もちろん、ミーティングも10 数回重ね、「育てたい新入社員像」や、具体的な指導方法を話し合う。
能力開発部の山下嘉康部長は話す。「ミーティングは、新入社員研修のスローガンを決めるところから始まります。新入社員研修の目的は、社会人としての心がまえや会社の基本的な業務知識を教えることですが、大切なのは、それを教えるに当たってどんな想いを込めるのか。スローガン次第で、伝え方や指導の仕方は変わってくるはずです」