信頼に基づく話し合いが、組織を活性化する
重要性は意識できても、なかなか改善することができないのがコミュニケーションである。
組織の力を発揮できるコミュニケーションや人間関係は、どうしたら構築できるのだろうか。
そして、集団の知を活かすためには、どう手を打てばよいのだろうか。
社員1人ひとりの「話し方」「聞き方」をベースに、組織を活性化し、多様性を活かす方法について探究した。
テクニック以前に重要な姿勢・態度
「中堅社員が、担当部門の代表として取引先との打ち合わせに参加しているのにもかかわらず、説明内容が明瞭でない」「若手が、『○○っすか』が敬語だと思っている」「管理職が、自分が考えていることを部下に伝えるだけで、部下の話を聞かない」――これらは、弊誌が2010年8月に行った『基本能力に関するアンケート』から抜粋した、「話す力」「聞く力」に関する生の声である。このアンケートでは、若手・中堅・管理職と、階層別に不足している「読む・書く・考える・聞く・話す」力について具体的に述べてもらったが、それぞれの役割に合った力がないという回答が多かった。「話す」「聞く」について、特に多かったのは、「話すため、聞くための姿勢がそもそもない」、ということだ(具体的な声は図表1参照)。「話す」「聞く」ためのテクニックについては、昨今、多くの情報が書籍やインターネットにあふれている。よって本稿では、もっと前段階であり重要な、「話す」「聞く」際に重要な態度、姿勢とは何かについて述べたい。「話す」際に重要な態度、姿勢――それは主に次の3つである。順に説明する。
①自分の考えをしっかり持つ
②相手を尊重する
③相手の立場や理解度、
メンタルモデルに合わせる
①自分の考えをしっかり持つ
最初に、自分の考えをまとめて話すこと、また、さまざまなことに関して自分の考えを持っている、ということが重要である。考えを十分整理しないまま話してしまっている人が多い。
②相手を尊重する
相手が誰であっても――年上、年下、またはポジションなどが上、下といった立場に関係なく、相手をまず1人の人間として尊重することが大前提である。つい、年下の意見を軽んじてしまったり、年上の前で自分の意見を引っ込めてしまったりする人も多いだろう。しかし対話する際には、イコールパートナーとして、お互いの考えや思いを話し合うべきだ。これは今回のオピニオンの1人、話し方研究所 会長の福田健氏も語るところである。
③相手の立場や理解度、
メンタルモデルに合わせて話す「メンタルモデル」とは、情報処理をしやすくする枠組みのこと。考える道筋、心の準備ともいえる。「このことには2つの重要なことがある」など、先にこれから話そうとする内容がどういった構成になっているかを伝えるなどして、聞き手のメンタルモデルを形成するように話せば、理解してもらいやすくなる。普段よくやりとりをしている相手なら、その人とのやりとりや思考のパターンに合わせて話をするといいだろう。