特集 関係の中で役割を実践させる “5S”を発揮する強い中堅の育て方
「中堅社員」とは、一般的には“新人以上管理職未満”と幅広で曖昧に捉えられ、実態がつかみにくいという声も聞かれる。そのため人材育成も、一番手薄になりがちである。しかし、将来企業の中核を担う人材として、放ってはおけない時期だ。彼・彼女らには、どういう能力を伸ばし、どういう役割を発揮してもらえば、「組織の要」となってもらえるのか――弊誌ではその新たな視点として、新しい「5S」を訴えたい。
中堅=5つの期待役割を伝え身につけてもらう「旅」の時期編集部
「中堅社員」が組織の要であることは、誰もが認めるだろう。新人・若手と管理職の間の層であること、そして、企業の次代を担う人材であるからだ。フラット化された組織では、中堅社員としての在籍期間が長くなっており、ボリュームゾーンでもある。
企業は、世代交代を繰り返していかなくては、持続的な活動を行えなくなるが、世代交代の受け手は、現在の中堅社員たちである。
そんな彼・彼女らに、しっかりと企業の今後を担ってもらうためには、どういった手はずを取っていけばいいのか、考えていきたい。
中堅の力をより引き出すには
弊誌では今回、「中堅社員」を、入社4年目ほど~ 20 年目ほどまでと、広く定義している。上はバブル期入社から、就職氷河期世代を含む。人によって物事に対する考え方も、モチベーションスイッチも随分と異なる。
日本能率協会マネジメントセンターが顧客企業に対し行ったアンケート(2011年)によると、教育担当者や会社側は、入社6~ 10 年目の中堅社員の課題を「部門視点、全社視点がない」「後輩の面倒見が悪い」「主体性・積極性に欠ける」「問題解決力がない」等々の点だと回答した。なぜ、「中堅社員」に対し、そうした課題が認識されているのだろうか。
理由としては、「育成機会の不足」や「役割意識の欠如」がある。
新入社員や管理職にはしっかりと各種研修を行い、年齢の節目ではキャリア研修を行うものの、それ以外の階層や時期には教育を行っていない、という企業も多い。
研修だけではなく、現場でも十分に学べない。就職氷河期の影響で、長年後輩を持たない中堅も多く、教えることで自身も学ぶ経験を積むことができない人も少なくないのだ。
また、上司たちは、多くの場合「プレイングマネジャー」だ。忙し過ぎて、部下に対しきちんと改めるべきポイントや、強みについてのフィードバックができない。中堅社員たちは自身の欠点を客観的に把握できず、改善への後押しも受けられない。
加えて、上司から「職場で果たすべき役割をしっかりと説明されていない」ということもある。「つど伝えているはずだ」「わざわざいわれなくても上司に聞き出すべき」と思う方もおられるだろう。だが、本当にそれでいいのだろうか。「非管理職だが、まとめ業務、リーダー業務をやっている。固定業務に専念したい」「業務の中で自分の担当範囲がわからないため、問題を認識しても躊躇してしまう場合がある」――これは、あるアンケート※1に寄せられた36 ~ 55歳の役職なし中堅社員の生の声だ。ポスト不足の中で、求められる仕事の範囲が広がっていくことに戸惑い、枠を超えるか超えないか、迷う姿がうかがえる。
変化の激しい時代、彼・彼女らに求める役割も変化する。こうした時代には、上司は部下に、期待役割を何度でも伝える必要があるのだ。
5Sを発揮すること=期待役割
そこで、中堅における期待役割の新たな視点として、「5S」を提案する。「 5S」といえば、最初に思い浮かぶのは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」だろう。しかし、今回の5Sは、
「リーダーシップ」