巻頭インタビュー 私の人材教育論 “世界標準”をつくるのは広い世界でチャレンジするグローカル人材
昇降機専業メーカーとして、65年の歴史を持つフジテック。早くから果敢に海外へ進出し、世界各地に営業拠点、生産拠点のネットワークを広げている。特にシンガポールや香港など、アジアのシェアは高く、際立った存在感を示す。内山高一取締役社長に、世界を攻める人材づくりの秘訣を伺った。
昇降機にも求められる“お国柄”
――来年、65周年を迎える貴社ですが、1960年代という早期からグローバル展開をされていますね。
内山
当社は昇降機の専業メーカーです。1964年、香港に拠点を設立して以来、「世界はひとつの市場」というグローバルな視野に立ち、企業活動を展開してきました。現在では、世界23の国と地域に企業拠点を、12カ所に生産拠点を築いています。
――グローバルにおける、2011年度の業績はいかがでしたか。
内山
北米で新設工事が減少したものの、中国では大規模住宅向けや地下鉄向けの新設工事が大幅増加しました。東南アジアでもシンガポール住宅開発局向けに800台のエレベータを大量一括受注するという快挙を遂げています。
今後、注目すべきはやはり中国市場ですね。中国の昇降機の新設需要は年間45万台ともいわれています。まさに世界最大の昇降機マーケットといえるでしょう。
この潮流に対応するために、2011年4月、グローバル事業本部を日本から上海市松江工業区内の「上海フジテック城」に移転させました。市場とものづくりの現場に密着しつつ、商品開発、販売、生産、調達などグローバル事業全体を統括しています。
この他、上海にはエスカレータ生産拠点「上海華昇フジテック」、エレベータ主要機器の生産・供給拠点「上海調達センター」、研究開発拠点「上海RDセンター」があり、当社のグローバルビジネスの一大拠点となっています。
一方、北京近郊にあるエレベータ生産拠点「華昇フジテック」では、生産体制、販売体制の一層の拡充を図るとともに、「新エレベータ研究塔」を現在建設中です。高層ビルや大規模ビルに対応した最先端技術力の強化をめざしています。
――新興国の需要に対応するため、地域密着型を貫こう、という方針ですね。成熟市場向けにはどんな方針をお持ちですか?
内山
日本を始め、北米、南米、香港、台湾、シンガポール、韓国などといった成熟市場では、既存の昇降機の機能や安全性を高めるリニューアル工事「モダニゼーション」需要の獲得に全力を挙げています。
おかげさまで、当社の最先端技術を結集した商品は、世界中で高い評価を受けています。著名なオフィスビル、ホテル、商業施設、公共施設、空港、駅など、あらゆる施設に多くのエレベータ、エスカレータ、オートウォーク(動く歩道)を納入してきました。
主な実績として、米国ではニューヨーク・タイムズ本社ビル、香港ではペニンシュラホテルや政府総合庁舎本部ビル、シンガポールではリゾート・ワールド・セントーサ、ドイツでは連邦議会議事堂、英国ではHSBC本社ビルなどにも納入しています。
――グローバルビジネスにおける御社の強みとは。
内山
やはり、開発、設計から調達、生産、据付、保守に至る一貫体制でしょう。あらゆるプロセスの設計を同時並行的に進行することを「コンカレントエンジニアリング」といいますが、そうした要領で全部門の社員が緊密に連携し合うことで、その強みを最大限に生かすことに努めています。このため、ビジネスサイクルを最適化し、スピーディーで的確な事業を展開することができていると思いますね。
当社のもう1つの特徴として、どこの企業グループにも属していない「専業メーカー」であることが挙げられます。おかげで、しがらみにとらわれずに、独自の販売、商品開発、生産などの事業展開を思い切って進めることができます。