CASE.3 富士ソフト企画 精神障害者を数多く雇用 障害者に自立を促し 互いに支え合う関係をつくる
日本国内で障害者の約半数を占めるといわれる精神障害者。しかし、その数と比較して、雇用数は非常に低い。その中にあって、富士ソフト企画では127名中67名と、雇用している障害者のうちの約半数が精神障害者だ。
なぜ、この会社では障害者を戦力化できているのだろうか。特に、精神障害者雇用と活用・能力開発の秘密とは。
●雇用の現状障害ではなく「できること」で採用
富士ソフト企画は、家電や自動車向け組込系ソフトなどを開発する富士ソフトの、グループ会社8社の特例子会社だ。2000年から障害者雇用を開始し、グループ適用の結果、2013年4月現在、全従業員140名のうち127名もの障害者を抱えている。中でも、障害者雇用ではまだ数が少ない精神障害者が67名と、1社としては国内で最大クラスとなっている(図表1)。なぜ、ここまで精神障害者の雇用が増えたのか。人材開発グループ長の遠田千穂氏はこう語る。
「2003年、神奈川県の精神福祉センターから、高等専門学校の教員で統合失調症を発症された方を採用しないかと相談がありました。映像関連の仕事がお願いできそうと採用を決めたところ、大いに活躍されたのです。次は、証券会社勤務でうつ病を発症した方を採用。この方も活躍されました。そこで2004~05年にかけて、一気に精神障害者を70名採用したのです」
図表2にあるように、同社で雇用されている障害者の52.8%が精神障害者だ。これらの比率は世間一般の発生率とほぼ同じなのだが、そうなった理由は富士ソフト企画が障害の中身で人材を選んでいないことに起因する。同社が採用時に問題とするのは、「どんな仕事ができるか」ということだけだ。同社では、名刺作成、データ入力、HP作成、サーバー管理、印刷物全般の制作、ダイレクトメール発送、生命保険・損害保険代理店業務、障害者委託訓練などの業務を行っている。
「障害者は全てハローワークからの採用ですが、求人票に詳細な仕事内容を記載しています。あくまでも、その人の得意なことは何かを確認して採用を決めているのです」
精神障害者の内訳をみると、6割が統合失調症、2割が躁うつ病、1割がてんかんと高次脳機能障害、残り1割がアスペルガー症候群となっている。学歴は大卒や大学院卒が多く、また新卒よりは転職組が多い。実は就職してから数年で発症している人が多く、その多くは20代前半まで健常者として生活してきた人たちだ。発症当初は戸惑いもあり、病を認めたくない気持ちもある。しかし、徐々に仕事がうまくいかなくなって退職。それから障害者として生きていこうと決意し、障害者手帳を取得してハローワークに登録するというケースが多いという。ちなみに同社の障害者の平均年齢は38.6歳となっている。