Opinion 2 職場、本人、フォロー体制 障害者を活かすカギは、職場の包容力と 能力を引き出すための雇用管理
法定雇用率は今後、精神障害者を雇用義務化することにより、さらに高まることが予想される。企業には、すでに雇用の進んでいる身体障害者や知的障害者に加え、精神障害者の雇用にも積極的に取り組むことが求められる。
そこでポイントとなるのが、就労支援機関やジョブコーチ(職場適応援助者)などとの連携だ。
精神障害を含めた障害者雇用はどのように行っていけばいいのか。自らもジョブコーチの経験を持つ、大妻女子大学の小川浩教授に聞いた。
今後の課題は“発達障害”
前掲の厚生労働省「平成24年障害者雇用状況の集計結果」に出ている「実雇用率と雇用されている障害者の数の推移」(P31図表)を見ると、この10年間、障害者雇用はほぼ右肩上がりで伸びてきていることがわかる。中でも注目したいのが、2005年まではゼロだった精神障害者の割合が年々増えていることだ。これは、法改正で2006年以降、精神障害者を「みなし雇用」(雇用義務の対象ではないが、身体障害者または精神障害者とみなす)として雇用率にカウントできるようになったためだ。
また、2005年に発達障害者支援法が施行され、知的障害を伴わない自閉症やアスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害などの人も申請すれば精神障害者保健福祉手帳を取得できるようになり、障害者雇用の対象になったことも大きく影響している。発達障害の特性としては、
○知的障害を伴わない自閉症やアスペルガー症候群……社会性(対人関係)やコミュニケーションの困難
○学習障害……読む・書く・計算など一部の能力の困難
○注意欠陥多動性障害……不注意・多動性・衝動性などの症状
が挙げられる(次頁図表)。知的な発達の遅れがないため、大学を卒業して普通に就職している人も少なくない。今後、以下の2つの理由から、発達障害者を中心とした精神障害者の雇用が増えていくと考えられる。第1の理由は、昨今、多様な業務への対応を求められる職場が増えていることだ。実際、発達障害のある人が健常者と同様に働くことが困難になって会社を辞めざるを得なくなり、精神障害者保健福祉手帳を申請し、障害者雇用の対象になるケースが増えている。