Opinion 2 グローバル化は究極の民主化 自社の“変わり者”をグローバル人材に新たなビジネスチャンスを見つける
グローバル化とは民主主義の究極の形だと天野氏は言う。世界では、組織名抜きで個人が自らを主張できなければならない。個人より組織を重視する日本企業の習慣を持ち込んでは、相手にされないのだ。そうした状況で、これから日本企業が打つべき手を紹介する。
相手にされない日本企業
米国人「このプロジェクトをあなたの会社と一緒にやりたい。私はこれからすぐにボストンに発たなくてはならないのだが、今ここで回答をくれないか」日本人「ええと、まずは本社に確認をとらないと。日本の本社が開く時間までちょっと待ってください」
このようなやりとりをしているようでは、グローバル社会では相手にされない。実際、日本企業と話をしてもスピード感がなく、結果が出ないということで、日本企業を相手にしない風潮がシリコンバレーの一部に広がっている。
中国人のビジネスマンだったらこう言うだろう。「そのプロジェクト、とてもいいですね。ぜひ検討しましょう」。
これは何も中国人に限った対応ではない。韓国人でもインド人でも、アメリカで働くビジネスマンであれば皆そう答える。つまり彼らの答え方こそがグローバルスタンダードなのだ。日本人だけが残念ながら違う。
今、世界で進むグローバル化とは、「個人」をベースにした大きな社会の変革だ。そこで人々は組織ではなく、個人として世の中と渡り合う。
私は米国の大学院を卒業した後にシリコンバレーで起業し、日米間の技術分野のコンサルティング業務や人材育成業務を20 年以上にわたって続けてきた。シリコンバレーは今この瞬間にも世界中から優秀な人材が集まり、数々のイノベーションが起こっている。グーグルなど世界的な企業が数多く誕生しているのもご承知の通りだ。
まさにグローバル化の最前線といえるこの場所には、日本企業の駐在員も数多い。しかし、残念ながらその存在感は極めて薄い。シリコンバレーでは「ちょっと本社にお伺いを」などと返答する人間は相手にされない。自分で判断できない人間だと思われるだけだ。
もちろんシリコンバレーにいる日本人駐在員は優秀な人材に違いない。だからこそわざわざシリコンバレーまで派遣されているのだ。しかし、何事も組織の判断を第一とする日本と、個人の判断で物事を進めていくグローバルの現場は、言ってみれば水と油のようなもの。日本人の駐在員がその中に混じってやり合うことは難しい。
また、本人がそれを望んだとしても、私の知る限り、彼らは本社への業務報告に追われているのが現実だ。これでは彼らの優秀さが全く生かされないし、わざわざアメリカにいる意味もなくなる。