ここから始める!ポジティブメンタルヘルス 第6回 マネジメントでの対策: 管理者教育に組み込むマネジメント・コンピテンシー
依然として悩ましい職場のメンタルヘルス問題。“未然防止”が重要になる今、人事部門がどう考え方を見直し、動けばいいかを、すぐ使える具体的なツールも含めて紹介する連載です。
いきいきした職場づくりと上司のマネジメントは不可分
今月も上司の行動について取り上げます。健康的でいきいきした職場をつくるための最も重要なキーパーソンは「上司」だからです。先月号でも取り上げた通り、上司のマネジメントスタイルが職場の雰囲気や部下の行動にも影響し、職場内のいじめやハラスメントにも関連があることがわかっています。また、職場で日常的に発生するさまざまな問題に対し、上司が適切なマネジメントを行わないでいると、問題が長期化・悪化し、メンタルヘルスやハラスメントなどに関し、深刻な事態が生じる可能性があります(図表1)。しかし逆に、適切なマネジメントが行われれば、問題の長期化や深刻化を防ぐことができるかもしれません。では、職場のさまざまな問題を防ぎ、職場をいきいきと活性化するためには、上司はどのようなマネジメントを行えばよいのでしょうか。また、そのようなマネジメントを促すために、会社はどのような施策を行えばよいのでしょうか。考え方と具体策をいくつかご紹介します。
健康いきいき職場をつくるマネジメント・コンピテンシー
英国の安全衛生庁(HSE)では、職場のストレス対策やメンタルヘルス対策の一環として、上司の行動が部下に与える影響に着目した研究を行っています。その活動の中で、職場のストレスマネジメントのために必要な上司のコンピテンシー(行動特性)が特定され、4つの領域で、合計12の項目にまとめられています(図表2)。以下に解説しましょう。
領域1.誠実さ、気分のコントロール、思いやり
○部下に対して誠実である職場をいきいきと保つ上司は、いくら部下が年下であっても、担当業務の経験が少なくても、相手を一人の人間として尊重し、親愛の念を持って接します。また、部下の前では、職業人として良い見本やロールモデルであろうと努めます。部下に対して誠実で正直に接し、業務の指示を含め、一貫した話し方をします。つまり、言うことをコロコロ変えたりしないということです。部下を含め、他人の陰口や悪口も決して口にしません。
○部下の前で落ち着きを保てる職場のストレスマネジメントができる上司は、締め切り前や期末などのプレッシャーを感じる状況でも、気分や態度を一定に保ち、落ち着いて行動します。あわてたりパニックになったりせず、部下にストレスやイライラをぶつけたりもしません。また、他人からの指摘や改善提案を、自分への批判や皮肉と解釈せずに冷静に受け入れます。