人材教育最前線 プロフェッショナル編 一流企業創りの原点は“人” 経営理念の浸透で育てる人材
「夢ある未来を、共に創る」を経営理念に掲げるSCSK。経営トップは「グループ全社員が夢を持ち、それを実現できる一流の会社になる」と社員にメッセージを送る。これに深く共感し、人材開発施策で会社を未来へと牽引しているのが、SCSK人事グループ人材開発部人材開発課長の中藤崇芳氏だ。「人材マネジメントは会社経営の基本。企業の理念と方向性を社員に浸透させ、その理念を実現できる人材を育てたい――」。会社の転機を身近に経験してきた中藤氏だからこそ成し得る人材開発・育成の形がそこにはあった。
人間力と仕事力を備えたリーダー人材の育成をめざす
人材開発の仕事が「楽しくてしかたがない」と語るのは、人材開発部 人材開発課長の中藤 崇芳 氏だ。中藤氏は2011年に人材開発課長に就任して以来、同社の人材育成に新たな風を吹き込んできた。勝ち残れる一流企業創りの原点は“人”であると信じ、“人間力”と“仕事力”を兼ね備えたリーダー人材の育成に邁進する中藤氏。その中で重視しているのが、信頼関係の構築とコミュニケーションの醸成だ。この教育観は教育現場だけでなく、それ以前の他部門で積み重ねてきた経験がつくり出した。そして、そこには中藤氏を人材開発の道へと導く、大きな転換点があった。
プロジェクトリーダーを務め信頼関係の大切さを実感
中藤氏の第1のターニングポイントは、経営管理部門時代に携わった「工事進行基準対応プロジェクト」だった。中藤氏は大学で経済学を専攻していたが、モノづくりを希望し、技術職でCSK(現SCSK)に入社した。コンピュータグラフィックスや3次元・2次元動画などを研究・開発する研究所を主な顧客として8年間、映像技術の開発に従事。クライアントと共同でデジタル放送関連の特許を取得するなど、プロの技術者として大きな成果も残していた。だが、立場が上がるにつれ、自らのリーダーシップ力やマネジメント力不足を感じ、価値観や視野を広げるために他部門への異動を希望した。そこで配属されたのが経営管理部門だった。異動の半年後、会社は持ち株会社制に移行。中藤氏は事業会社側の経営管理部門へ入り、事業会社間を連携させるための中期計画書づくりなど経営に近い場所で業務に携わっていた。そんな中で声がかかったのが、「工事進行基準対応プロジェクト」だった。「工事進行基準」とは長期の請負案件において、その進捗度合いに応じて売り上げを複数回に分けて計上する会計制度で、2009年4月より受注ソフトウェア開発業にも適用された。ソフトウェアの開発終了後、売り上げや経費をまとめて計上するそれまでの「工事完成基準」から「工事進行基準」への変更は、経理部門だけでなく、各部署が連携し、業務に落とし込む必要があったため大がかりな対応が迫られた。当初ホールディングスの経理部門が旗振り役を務めていたが、他部署との連携がうまくいかず、プロジェクトは幾度となく頓挫していた。適用開始まで半年を切り、切羽詰まった状況下で中藤氏に白羽の矢が立ったのだ。「経営管理部門に異動し3年ほど経っていましたが、これといった成果が上げられず悩んでいた時期でした。経営補佐業務にも苦労していたため、上司がチャンスをくれたのです」