おわりに 読んで書く基礎、そして対話
個人が行動変容を起こし、深い思考力を獲得するための基本能力向上策とは。また、そのために人材開発部門や会社側ができることとは。OPINION2の佐藤優氏(40ページ)は、きちんと考えるには読解力や論理的思考力が必要だが、その土台になる「基礎知識」を身につけるための“熟読”について語った。佐藤氏は月に300冊以上の本を読むという。やはり一定量のインプットが必要なのだ。「言語能力」も基礎の基礎だが、日本人の言語能力に危機感を覚え、2010年から取り組みを始めたのは東京都(58ページ)だ。
欧米を中心に、各国では幼少の頃から、「言語技術」と呼ばれる、言葉の使い方の“型”が教えられている。それは、自分の論理や感情を表現・説明し、折衝を行うことなどに有効だが、日本では教えられていない。そこで東京都では、お膝元である都庁や都内で働く職員、そして中高生に、言語技術を学んでもらう施策を続けている。弊誌2010年11月号で、つくば言語技術教育研究所の三森ゆりか氏は「『言語技術』が教えられていないために、日本は諸外国との交渉場面で不利な状況にある」と語った。現在は多くの企業で、若手を中心に行われているビジネス基本能力教育だが、果たして若手だけでいいのだろうか。