CASE.2 楽天技術研究所 研究者の事業的視野を広げる 研究所内外での人的交流を深め 多様で柔軟な思考力を身につける
多様性を持って日々変化し続けるネットビジネスの世界では、さまざまな分野の人とかかわり、スタッフの視野を広げられるかどうかが事業発展のカギとなる。楽天グループの技術戦略の中核を担う楽天技術研究所では、研究者が「深く考える」前提となる事業的視野を広げるためのさまざまな取り組みを行っている。
●背景インターネットビジネスに不可欠な多様な視点
国内最大級のインターネット・ショッピングモール「楽天市場」をはじめ、さまざまなネットビジネスを展開する楽天グループ。その技術戦略の中核を担うR&D部門が楽天技術研究所だ。所長の森正弥氏は「当研究所はコンピュータサイエンスの博士号を持った人材や現職の教授などアカデミックなメンバーを中心に構成されており、『読み・書き・考える』といったことは一通り身につけているといえます」と話す。しかし、学術の世界で身についた科学的アプローチだけでは、ネットビジネスにつながるような研究を行うには不十分であるため、ビジネスの発想も取り入れて研究をハイブリッドにしていくことが課題だという。
「特にインターネットビジネスには、他のビジネスにはない思考法が求められます。キーワードは『集合知』『ロングテール』『スケーラビリティ』。この3要素を無視して、インターネットの技術やサービスを考えることはできません。何かテーマを決めてロジカルシンキングのアプローチで分析を進めていっても、この3要素が入らなければ、研究内容が絵に描いた餅になりやすいのです」(森氏、以下同)
「集合知」とは、多くの人々から寄せられた情報の集まりのこと。インターネットコンテンツの多くがこれに当たり、人々がどう動くかに大きく左右される。「スケーラビリティ」とは“拡張性”であり、利用者が拡大しても柔軟に対応できるシステムが求められる。そして「ロングテール(現象)」とは、あまり売れていない大多数の商品の売り上げが、少数のヒット商品の売り上げを凌駕している状態。実はネット販売ではこうしたロングテールの売り上げが、全体の8割を占めるといわれる。「これらを踏まえると、インターネットは多様性の世界といえます。そのため、さまざまな分野の人とかかわり、視野を広げることが重要なのです」