連載 ここから始める! ポジティブメンタルヘルス 第8回科学的根拠に基づいた効果的な人材育成研修の進め方: 認知行動療法の活用法
依然として悩ましい職場のメンタルヘルス問題。“ 未然防止”が重要になる今、人事部門がどう考え方を見直し、動けばいいかを、すぐ使える具体的なツールも含めて紹介する連載です。
1. はじめに
第2回~第4回の「人事でつくることができる仕組み」、第5回~第7回の「マネジメントでの対策」に続き、第8回・第9回では、「一般従業員向け対策」について取り上げます。
今号の第8回では具体策の1つとして、教育研修に「認知行動療法」の要素をどのように取り入れたらよいのかをお示しします。
「認知行動療法」は科学的に効果が認められている心理療法であり、それを研修に取り入れることで、従業員が仕事のストレスやパフォーマンスを自分でマネジメントできるようになるために有益だと、TOMH 研究会では考えています。
2007年に厚生労働省が行った労働者健康状況調査によると、労働者への教育研修・情報提供を行っている事業所は49.3%となっています。他の取り組みと比べると教育研修は実施率が高く、この結果からも、科学的根拠に基づいた効果的な方法で研修を実施することは、新たな活動を一から始めるよりも手をつけやすい対策だといえます。
認知行動療法は、従業員のセルフマネジメントに効果的といわれ、取り入れられるようになってきています。しかし、対労働者に特化した認知行動療法の活用法に関する書籍などはまだ少ないのが現状です。
そこで今回は、認知行動療法とはどのようなもので、教育研修へはどう活用したらよいのかについて解説します。さらに具体例として、筆者らが開発を進めている、従業員のワーク・エンゲイジメントやパフォーマンスなど、ポジティブな面への効果に焦点を当てた研修の内容についても紹介します。