グローバル調査レポート 第4回 今こそ求められる人事機能の大転換 ~2013 Towers Watson HR Service Delivery Surveyから~
今回は、「2013 Towers Watson HR Service Delivery Survey」からである。HR Service Deliveryとは、「人事のサービス・機能の提供のあり方」を意味する。この調査は、人事部門の役割・機能・サービス内容・生産性や人事部門が直面する課題、人事情報テクノロジー等に関し、タワーズワトソンが過去16年にわたり毎年実施しているものである。そこからわかった、今後の人事部門がめざすべき方向性と具体策とは。
実施:2013年1月~2月有効回答:グローバル企業1,025社
1 今、人事組織に求められる改革
従来、日本企業だけでなく、欧米企業の人事の多くの組織は「採用」「教育」「給与」「福利厚生」「労務」等、人事のプロセス・タスクによって分けられていた(本社人事だけでなく、部門人事等も同様のことがいえる)。これは、「人事」にとっての効率性を追求した組織モデルであり、内部論理に基づくものといえる。
しかし、現在のように日本国内あるいは欧米での構造改革を進める一方で、新興国での事業拡大を図るような状況において、従来型の人事組織では、事業が抱える人の課題に対して的確な対応ができない。事業から依頼された事項を「後追い」でフォローするケースも散見される。M&A・事業の統廃合はその典型例だ。事業の統廃合のプランや交渉についてかなり内容が固まった段階でようやく、人事部にデューデリジェンス(人材や組織に関する調査)や人員削減の依頼が来る、という話をよく耳にする。これでは人事は「事業の後追い」「オペレーション中心」などと言われても仕方ないだろう。そして、事業部門の抱えるニーズは、人事の仕事としてよく挙げられる「採用」「給与」等だけで対応できるものではない。
たとえば「事業戦略を実現するための人員計画」があるとする。これは事業戦略に沿って○年後に何人必要なのかを考える、という単純な話ではない。事業戦略を実現するためには、どのようなスキル・知識・経験を持った人材が、どの地域・事業において何人必要になるのか。そしてそのマーケットには、そもそもそういう人材がいるのか。いるとすれば福利厚生を含めた人件費はいくらなのか。もし、マーケットにいないとすれば、これから経験の浅い人材を採用して教育することで対応できるのか。それでは間に合わないなら、他の地域から異動・転勤させるのか等を調査・検討するということなのである。
こうした人員計画1つとっても、それを考えるためには、従来の「採用」担当、「給与」担当、という括りで対応しきれないのは自明である。
欧米企業の場合、1990 年代より人事組織・機能の再編に着手してきた。当時の欧米企業の人事は「オペレーション」中心で、「企画・戦略」機能が弱かったのだ。そこで、当初は人事機能の生産性を高め、コスト削減を目的に人事組織の再編が行われた。
そして2010 年代になり、欧米企業はさらなる人事機能の再編に取り組んでいる。喫緊の課題は、ビジネスに対する貢献を高めるためのコンサルテーションや戦略機能の強化だ。中でも、ビジネスパートナーの強化が求められている。
2 人事組織・体制の改革内容
本調査で、2013~2014年にかけて人事部門の組織体制の変更・改革を検討しているかを聞いたところ、検討している企業は全体の約4割という結果であった(図1)。
その主な目的・理由は、「さらなる効率性の実現」(74%)や「品質の改善」(53%)であり、「コスト削減」は37%にとどまっている。単なるコスト削減ではなく、人事が提供するサービスの質・内容そのものを見直そうとする企業が多いことを示している。
図2は過去18カ月に実施した人事改革を示している。47%の企業は人事プロセスの見直しを実施し、39%の企業は、ラインマネジャーによるマネジメント能力の強化に取り組んだ。そして35%の企業が、事業に対し直接貢献するHRビジネスパートナーの再強化に取り組んでいる。