CASE.4 ベネッセコーポレーション 実務家が語る④ 試行錯誤を重ねた「攻め」の20年
「福武書店」から「ベネッセ」へ。
先を見続ける経営に合わせて、人事制度も大胆に変更してきた同社。
この20年は、大胆な変更とその調整の繰り返しだったといっても過言ではない。
同社の「攻め」の姿勢が表れた20年を振り返る。
● ~ 1980年代創業者の求心力で大成長
ベネッセコーポレーションの前身である「福武書店」が岡山県で誕生したのは1955年(本社:岡山県岡山市、東京本部:東京都多摩市)。生徒手帳の発行や、高校生向け模擬試験の開催と徐々に事業内容を広げ、1969年には通信教育講座「進研ゼミ高校講座」を開講。その成功を受け、講座の対象は中学生、小学生、幼児と次々に拡大していき、通信教育は福武書店の基幹事業となった。
「この成功を牽引してきたのが、創業者の福武哲彦です。彼の言うことが福武書店のルールであり、彼の存在そのものが全社員の求心力でした」
そう語るのは、人財部 部長の村上久乃氏だ。
しかし1986 年、福武哲彦氏が急逝。経営のバトンが福武總一郎氏(現会長)に渡されたのを契機に、同社にとっての激動の90 年代が始まった。
● 1990年代個人の自主性に多くを委ねる
1990 年、同社はラテン語の「bene(よく)」と「esse(生きる)」を組み合わせた造語「Benesse」をフィロソフィー・ブランドに掲げ、新たな企業理念を導入する。
「社長のカリスマ性で社員のモチベーションを支えていた会社から、企業理念とそれをシンプルに言い表した『よく生きる』というフィロソフィーで社員の心を引っ張る会社へと、大きく転換したのです」(村上氏)
そして、より多くの人々の「よく生きる」の実現を支援するため、出産・育児に関する情報誌『たまごクラブ』『ひよこクラブ』の創刊や、介護事業への参入などに着手。さらにはベルリッツインターナショナル(現ベルリッツコーポレーション)のグループ化や、1989年に台湾を皮切りにスタートした海外進出など、事業の多角化を推し進めていった。
「フィロソフィー・ブランド『ベネッセ』の導入以降、『出版だけにとどまらない』と会長は常に口にし続けていましたので、事業の多角化は必然的なものとして受け止められました」(村上氏)
そして「ベネッセコーポレーション」へ社名を変更した1995 年、人事制度にも大きな改革が行われた。