第1特集300号特別企画 この20年の人材戦略史
バブル崩壊、リーマンショックを経験した日本経済。長期間にわたる景気の低迷と市場の縮小、雇用労働環境の変化等が起こり、企業側も個々人にも方向転換が迫られる時期であった。企業の人材戦略も紆余曲折を余儀なくされ、企業の人材教育費にもコストダウンのメスが入れられた。そうして、環境が激変したこの20年、日本企業の人材戦略にはどのような変遷があったのか。うまく運んだ点や課題とは。それらを識者や実務家の視点で整理し、過去から学ぶべき点を明らかにして、次号2014年1月号「これからのHR展望」特集へとバトンをわたす。
日本の1990年代から2010年代までは、「失われた20年」という否定的な言葉で語られてきた。しかし、これには諸説ある。2013 年の8月にも、TheNew York Timesに、『語られ始めた「日本の失われた20年はウソ」という真実』(The Myth of Japan’s Failure,byEamonn Fingleton)という記事が掲載され、日本経済新聞電子版8月29日に翻訳版が転載された。
記事によれば、1991年から2012 年にかけて、米国の労働人口は23%も増加したのに対し、日本は0.6%※1。労働人口が増えていないのだから、1人あたりの生産性はかなり伸びたはずであり、成長率も速い。日本の20 年は“失われて”などいなかった、というものである。
また、日本の他のメディア※2でも、資本生産性とTFP(全要素生産性)と一人当たりGDPを分析し、「実は生産性は向上していた」ことを論じているものがある。しかし、そうしたメディアも、なぜそういう計算になるかは、より分析が必要である、としている。この20 年が失われていたのかいなかったのかは、マクロ、ミクロ的視点による、さらなる研究・考察が必要である。
その研究は他にゆずるとして、今回、小誌の「300 号特別企画」特集では、この20年間の人事・人材開発における変化を振り返った。
企業の実務家と、人事管理・経営戦略の研究者に取材し、日本企業のこの20年の活動から学び、修正すべきことと、今後も守り抜いていくべきことは何なのかを整理した。