前編 デジタルスキルがビジネスマナーになる時代 人事だからできる全社教育のアップデート 日本能率協会マネジメントセンター ラーニングデベロップメント本部 DX開発部
萩谷俊之
デジタル人材育成を進めたものの、「思ったような成果につながらない」「研修はしているが現場が変わらない」と悩む企業は、少なくない。人事部門には、そうした悩みを解消するための果たすべき役割がある――。日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)のDX 開発部は、日々「DX を進めようにも、何から始めればいいかわからない」という企業に寄り添い、変革に伴走している。同部メンバーの知見から、DX 研修において人事部門が担うべき役割に迫る。
[取材・文]=本間 幹 [写真]=編集部

DX推進の現在地鮮明になる二極化の図式
DXの必要性が叫ばれて久しいが、DXの推進度合いについて、「日本国内では、二極化が進んでいる」と語るのが、日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)ラーニングデベロップメント本部DX開発部部長萩谷俊之だ。
「国内では、eラーニングをはじめ、デジタル人材育成を目的とした教育プログラムを導入したものの、あまり活用されていない企業と、きちんと計画を立ててDX教育を展開している企業に大別できます。つまり、DXの進捗度合いに大きな格差が生まれているのです。そして、両者では、見えている景色がまったく異なります。前者は研修プログラムの見直しを検討し、後者は、より実務的な教育プログラムが必要だと考えています」
いまだにDX推進に着手できていない企業も少なくないようだ。萩谷が統括するDX開発部内のDX開発センターに所属する上野大樹は、この点について次のように語る。
「いよいよDXをやらないとまずいと考えているものの、『何をすればよいかわからない』あるいは『どこに相談すればいいかわからない』という企業も多いですね」
また、一見DXに成功しているように見えても、問題をはらんでいるケースも。たとえば、メディアに登場するようなDXの成功事例は、往々にして全社のなかの先進的な取り組みの一部を切り取ったものだ。成功の裏で、デジタル化についていけないシニア層の社員について十分な対応がなされていない状況は珍しくはない。
つまり、取り組みの進捗状況や業種、企業規模により、DX推進における課題は様々。以前よりも、DXにまつわる課題は複雑化・多様化している。
そのような状況でも、明白なのは「DX推進は全社でやらなければ成果につながりにくい」(萩谷)ということ。
たとえば、高度なデジタルスキルを有する人材を育成した結果、高度なシステムを構築できたとしても、それを使う現場のユーザーが理解できなければ実効性を欠いてしまう。「紙の方がやりやすい」「従来どおり、Excelに手入力で集計した方が便利」という声が現場に残る限り、成果につなげることは困難である。DXとは、組織を根本から変えていく、地道な取り組みなのである。
JMAMのデジタル人材育成プログラム3つの柱
JMAMでは、全社的なDXを適切かつ着実に推進するためのデジタル人材育成プログラムを展開。特徴は「ひらくDX」「つなぐDX」「ねづくAI」という3つの柱で、体系立ててブランド設計をしている点にある。
「デジタルやAI活用スキルは、いまやビジネスマナーと同じように、ビジネスパーソンに求められる基本的なスキルです。これらのスキルやリテラシーを網羅的に身につけられるプログラム群を『ひらくDX』と位置づけています。そして、事業においてビジネスとテクノロジーをつなぐことをリードするDXの中核人材を育成するプログラム群をまとめたのが『つなぐDX』。最後の『ねづくAI』ブランドは、AI活用を当たり前にしていくために風土変革を目指したもの。具体的には組織全体で生成AIを活用した働き方の変革を進めます。なお、『つなぐDX』には、工場と本社のDX推進者をつなぐ人材を育成する、製造現場に特化した『製造業特化つなぐDX』も用意しています。製造業では、本社機能はデジタル化できているものの、工場は後回しというケースが多いので、そのような課題を解決するためのブランドです。以上の4つのブランドでeラーニングや研修などを体系立てて提供しています」(萩谷)

