HR TREND KEYWORD 2026 ビジネススキル|ルール・コンピテンシー 課題が複雑化した社会で求められる「ルールに主体的に関わる態度」 財津康輔氏 日本大学 生産工学部 数理情報工学科 助教
財津康輔氏
「今は、ルールを一度決めればゴールにたどりつける時代ではない」――。「ルール・コンピテンシー」を提唱する日本大学生産工学部助教の財津康輔氏はそう話す。我々は、ルールとどう向き合っていく必要があるのか。エンゲージメントやイノベーション創出の観点でも無視できない「ルール・コンピテンシー」という新しい概念について、話を聞いた。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=編集部
目的の実現のためより良いルールを創出する
「はたして、このルールは意味があるのだろうか?」そんな疑問を感じたことがある人は、少なくないはずだ。仕事をしていても、社内の謎ルールのせいで余計な手間がかかったり、いいアイデアを実行できなかったりするというのは、珍しいことではないだろう。そこで、ルールを「ただ盲目的に守るもの」から、「目的を果たすために機能するもの」に必要に応じて変えていこうというのが「ルール・コンピテンシー」である。
「ルールには、法律や就業規則、校則といった明文化されたものから、慣習やマナーといった社会で共有されている規範、さらには個人が実践しているマイルールまで、広範囲のものがあります。ルール・コンピテンシーは、これらのルールを理解して守るだけでなく、そもそもの目的に沿って最適な運用をしたり、修正をしていく姿勢―― 簡単にいえばルールに対する主体的な態度を指します」
そう説明するのは、日本大学生産工学部数理情報工学科助教の財津康輔氏だ。よく似た概念に「ルール・リテラシー」があるが、違いはどこにあるのか。
「ルール・リテラシーは与えられたルールを理解して使いこなす力、そして規範意識は、社会のルールを守ろうとする意識のことです。ルールを見直すにはまずルールを理解する必要があるので、前提としてルール・リテラシーや規範意識があり、その上にルール・コンピテンシーが加わるという構造です(図1)」

たとえば「経費精算の申請は紙に書いて提出」という社内ルールは、かつてなら合理性があっただろう。しかしネットやツールの環境が整った今、紙に限定するのは明らかに非効率であり、オンラインで申請する方がずっと早い。そうしたルールに対して「決まりだから」と現状維持するのではなく、より良く修正しようとするのがルール・コンピテンシーが高い人の行動だといえるだろう。
ただし、ルールを見直すといっても、必ずしも変更を伴うわけではない点には注意が必要だ。
「非合理的なルールでも、理念や意義、成立経緯を考えると、安易に変更してはいけないものもあります。意識したいのは、効率的かどうかではなく、目的を実現するために機能しているかどうか、ということ。修正した方が目的に近づくなら修正した方がいいし、そうでなければそのままにしてもかまいません。目的に立ち返ってルールを確認することも、ルール・コンピテンシーが高い人の行動の1つです」
複雑な社会ではルールの見直しが欠かせない
ルールを確認した結果、現行ルールが最適だとわかり、何も変更する必要がなかったとしても、それを確認できたことは意味を持つ。ルールに対して抱いていた違和感が解消され、より納得感を持ってルールに従うことができれば、働くうえでの主体性やエンゲージメント向上につながる可能性があるからだ。

