OPINION3 子どもも人事もビジネスパーソンも 戦略的に遊び、想定外の場で 「情報編集力」を鍛えよ
前ページまでに、人工知能や脳神経科学の視点から、
後の変化の予測と、組織と個人が準備・対応できることを見てきた。
同じことを、ビジネスの世界から教育界に転身し、
学校教育の改革に取り組む藤原和博氏はどう見ているのか。
子どもたちや、今を生きる我々が、どういう姿勢で、どういう能力を高めるべきか。
また、企業の人事・人材開発部門ができることについて聞いた。
ピコ太郎と教育改革
今後10 年以内の変化で一番、国際社会にインパクトがあるのは「世界50億人がスマホでつながること」である。ジャスティン・ビーバーのツイートで世界中で大ブレイク。その年のうちに紅白出場というピコ太郎現象が、スマホで人間の脳がつながり始めたことを象徴している。言葉の壁を越えて世界中が交流できる日も近い。そこにAIや、ネットと接続したロボットがつながったら、世界の半分以上がネット内に構築され、子どもたちは人生の半分をネット内で過ごすことになるだろう。
教育界もそうしたAI 時代を見据えて、改革を行っている。2020 年には大学入試制度が変わる。数学・国語で記述式の問いが導入されることになったが、これは知識だけでなく、思考力・判断力・表現力を測れるようにするのが狙いである。
教育政策の世界標準を追究するOECD(経済協力開発機構)も、今後は考え方、創造性、批判的思考が問題解決の鍵となることや、ICTを含めた他者や世界と関われる力の教育が大切だと呼びかけている。
■生きる力の三角形
そんな中、僕自身は、校長を務める一条高校などで「よのなか科」という授業を行いながら、子どもたちの「生きる力の三角形」(図1)を育んできた。これらの力はもちろん、ビジネスパーソンにも同様に大切である。
土台は体力や精神力、集中力といった「基礎的人間力」。左上には「情報処理力」。狭い意味での基礎学力で、「1人で速く正確に情報を処理できる力」である。そして右上には、正解がひとつではない問題を解決する「情報編集力」を置いている。
情報処理力は知識のインプット、情報編集力は学んだことを駆使してアウトプットすること。言い換えれば、処理力は頭の回転の速さであり、正解を探す「ジグソーパズル型学力」で、編集力は頭の柔らかさであり、世界観を生み出す「レゴ型学力」ともいえる。
これまでの学校教育は、教科で点数がとれる情報処理力重視だった。三角形の要素はどれも重要だが、複雑で正解が見えないAI 時代においては、特に右上の情報編集力をどこまで高められるかが鍵を握る。
情報編集力5つのリテラシー
その情報編集力を構成するのは、図2の5つのリテラシーである。