CASE1 サントリーホールディングス ミドル・シニア世代がメインターゲットの学部を新設 大切なのは、自身を顧みる機会の提供と対話によるアウトプット 吉井晶子氏 サントリーホールディングス 人財戦略本部 サントリー大学 課長

サントリーグループでは人生100年時代の到来を控え、社員のキャリア自律を目的とした包括的な支援を行う。
氷河期世代と重なるミドル・シニア向け施策について、取り組みの狙いと期待する効果を聞いた。
[取材・文]=たなべ やすこ [写真]=編集部
忙しさでキャリアを後回し焦る一方で動き出せない
サントリーでは企業内大学「サントリー大学」に2023年、日本で働く全社員を対象とする「100年キャリア学部」を新設した。社員が人生100年時代に対応できるマインドセットやスキルセットを身につけ、自身のキャリアを主体的に考えられるようになることを目的としている。対象は特に40代以上のミドル・シニア世代。氷河期世代に特化した支援を準備するわけではないが、主に90年代から2000年代前半に入社した氷河期世代と重なる層が、現在の100年キャリア学部のメインターゲットとなる。
人財戦略本部サントリー大学課長の吉井晶子氏は「自身もミドル世代のひとり」として、この世代の就業観を次のように表現する。
「ひたすら必死に突っ走って来た、という感じでしょうか。会社への貢献意欲は高く、目の前の仕事を確実にやり遂げることを大切にしてきた印象です。仕事や家庭のことで忙しい日々を過ごしており、どのような人生やキャリアを歩みたいかといったことを、後回しにせざるを得なかった人が多いように思います」
人生100年時代、定年退職後も現役として働き続ける可能性がある。
「サントリーを卒業した先までも見据えて、長期スパンで自らのキャリアについて考えることが必要になっており、自らオーナーシップを持ってキャリアをデザインしていくには、世代を問わず『自分が何をやりたいか』という志を持つことが重要であると考えています。40代以上の社員は、これまで培ってきたスキルや経験が豊富にあり、それを本人がしっかりと認識し、自分ならではのキャリアのビジョンを描くことが大切です」
人生は「何歳からでもやり直しがきく」とはいわれる。だが長年1つの会社で過ごしてきた人が、歳を重ね、体力も気力も低下したところで生き方の急転換を図るのはなかなか厳しい。“そのとき”が来る前に、会社とは別のネットワークを築いたり資格取得に取り組んだりと、自分の現在地を把握し、望ましい人生に向けて逆算的に動く必要がある。そのための支援を行っているのが、これから説明する現在の同社の施策である。
「10年3仕事」で得た職務経験をどう活かすか

同社のキャリア施策の全体像が図である。まずはその体制を見ていこう。同社のミドル・シニア向けの施策は、サントリー大学とキャリア推進センターの2つの部署で管轄する。サントリー大学では能力開発コンテンツの提供が中心であるのに対し、キャリア推進センターはライフプランセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングといった、社員の内面に寄り添うアプローチを行う。サントリー大学とキャリア推進センター共催での取り組みも多く、社員に対しては「100年キャリア学部」のサイトが窓口となり、それぞれの企画をまとめて紹介する形をとる。
ミドル・シニア世代への施策の起点は、43歳に行われるワークショップだ。45歳ごろから緩やかに行動を起こせるように、自身の“これまで”を棚卸しし、“これから”の在り方を模索する。