“人がやらない仕事”を担うキャリア戦略 再現性の高いスキルを生かし他の領域との掛け算で優れた人材に 山崎 万里子氏 ユナイテッドアローズ 執行役員 CHRO

日本を代表するセレクトショップであるユナイテッドアローズ。アパレル業界はコロナ禍のダメージを受けたが、2025年3月期の売り上げは1,509億円(連結)で、コロナ禍前の水準にほぼ回復した。人事を統括するCHRO山崎万里子氏は、新卒2期目に入社した生え抜きで、人事領域に異動したのは入社22年目。それまでは人事に関心はなく、「粛清人事だと思った」と笑う。山崎氏は人事の役割をどのように捉え、自身の価値を発揮してきたのか、話を聞いた。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=中山博敬

ユナイテッドアローズという船に乗りたい
1989年創業のユナイテッドアローズは、90年に渋谷に1号店を開いた後、福岡・大名に2号店をオープンさせた。当時、博多のファッション好き高校生だった山崎氏は、店に足を踏み入れて人生が変わった。

「セレクトショップという形態が生まれて初めてで新鮮でした。それ以上に感激したのはお店の雰囲気です。高校2年生から見ると、20代後半のスタッフたちはみんな大人。大人は怖い印象があったのですが、ユナイテッドアローズのお兄さんお姉さんたちは腰が低くて、私にも敬語で接してくれました。仕事として意識したわけではないですが、将来は絶対そちら側の世界に行くんだと思ったことを覚えています」
実際に“中の人”になるのは、大学進学で上京して原宿本店を訪れてから。買い物後、レジでバイト募集の貼り紙を見て、その場で「どうすれば働けますか」とアプローチした。
「ワープロが打てる」と話したら採用されたが、事務専任というわけではなく、本人曰く「雑用係」だった。
「当時はお店とオフィスが一体化していて、全員が開店1時間半前に来て掃除・朝礼。お客様をお迎えした後は、手の空いた人がバックオフィスで事務の仕事をしていました。他にもカフェのスタッフとしてヘルプに入ったり、撮影の手伝いをしたり。すごく楽しかったです。もちろん就職もユナイテッドアローズ。何かの職種に就きたいというのではなく、『ユナイテッドアローズという船に乗りたい』という思いでした」
人がやらない仕事を意図的に選んで頭角を現す
最初に配属されたのは広告宣伝部だった。上司は創業役員の1人で、現在は上級顧問を務める栗野宏文氏。栗野氏はクリエイティブ担当で、デザイナー登竜門「LVMHプライズ」の外部審査員を長年務める右脳派である。当時は教育研修制度が整備されておらず、ほぼOJT。栗野氏のもとで働けば右脳派に育ちそうだが、山崎氏は意図的に別の道を選ぶ。