グローバル調査レポート 第12回 グローバル企業が実践する ハイポテンシャル人材の選抜と育成
グローバル化の進展やテクノロジーの進化など、日本企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化している。
今、そんな荒波を切り拓く次世代リーダーが求められているが、その予備軍となるハイポテンシャル人材の選抜と育成に悩む企業は少なくない。
グローバル調査をひもときながら、日本企業にとってのヒントを模索する。
Reported by: KORN FERRY (HayGroup)
1 次世代リーダー育成が共通課題
将来、自社の成長を牽引してくれるようなリーダーはどう見極め、育成していけばいいのだろうか。現在大きな成果を上げているトップの後任はどうやって選べばいいのだろうか。
あらゆる企業が早晩、サクセッション・マネジメント(後継者の計画的育成)の問題に直面する。組織の中核を担うリーダーの後継者は、必要になってから慌てて探しても遅い。組織の舵を取るようなリーダーの育成には数十年もの時間を要するのに、リーダーはいつ必要になるともしれないのだ。
そのうえ、時代の変化はかつてないほど激しく、仕事の難易度も年々上がっている。現在成果を出せていても、そのスキルが将来も通用するとは限らない。未来を見据えたリーダー育成が求められている。
リーダー育成に当たり、サクセッション・マネジメントの取り組みが日本企業の間に広まって久しい。これは歓迎すべきことである。かつて一般的だった上司推薦という古色蒼然とした手法と決別し、組織内の幅広い人材を対象に、より客観的な指標を用いて計画的にリーダーを選抜・育成しようとしているのだから。
また2015 年より、上場企業を対象にコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)が導入され、企業経営への外部からの監査や指摘が強化されるようになった。これはリーダーの選定にも一層の透明性や妥当性が担保される必要があることを意味する。
2 高度人材見極め時の“落とし穴”
そこでコーン・フェリーでは2014 年末に、サクセッション・マネジメントをテーマにしたグローバル調査を行い、欧米を中心としたグローバル企業の1000人を超えるトップエグゼクティブや人事責任者から回答を得た。結果、一部の確固とした手法を持つ先進企業を除き、欧米企業もサクセッション・マネジメントが成果を上げているとは言い難いことが明らかになった。
この調査の中から、特にサクセッション・マネジメントの入り口となるハイポテンシャル人材の選抜と育成にフォーカスし、日本企業にとってのヒントを模索してみよう。
ハイポテンシャル人材の選抜・育成は、他の人事施策と比較して時間とコストがかかる。いかにしてその費用対効果を高めることができるのか。それを探るべく、まずは、私たちがよく目にする落とし穴をご紹介したい。
①ハイパフォーマーとハイポテンシャル人材を混同する
「パフォーマンス」とは、現在の職務においてどの程度効果的に成果を創出しているか、である。一方、「ポテンシャル」とは、中・長期的に見て、さらに上層の管理職として成功するための資質を備えているか、であり、明らかに両者は異なる。現在職務と上位職務とでは求められる要件が異なるため、現職で高いパフォーマンスを上げていても、上位職務でも成果を挙げられる保証はないのだ。ハイポテンシャル人材がハイパフォーマーになる確率は高いが、ハイパフォーマーの30%しかハイポテンシャル人材ではないという調査もある(Corporate LeadershipCouncil、2005 年)。
したがって、現職のパフォーマンスは重要な指標とはなるものの、それだけを意思決定の判断材料とするのは避けるべきだ。今回の調査からも、ハイポテンシャル人材を正確に特定できていることに自信を持つ回答者はわずか51%だった(図1)。
②個人の志向を考慮しない
加えて、多くの企業が、個人の志向性やキャリアゴールといった重要なポイントを見落としている。リーダーになることを望まず、今の職務で専門性を究めたいという人も決して少なくない。特にCEOなど、上位職務になればなるほど不確実性やプレッシャーといったリスクにさらされる。今回の調査では、CEO への昇進が見込まれる人材の約1/3(33%)はその職務を望んでいないことが分かった(図2)。そういう人材をリーダーに抜擢しても、本人も組織も不幸になるだけだ。
しかも、上司や人事に本音を公言できない雰囲気が存在することもあるので、アセスメントや面談など、さまざまなアプローチから本心を見抜くようにすることが求められる。