連載 調査データファイル 第71 回 雇用・人事システムの構造改革 中小企業の人材育成Part3
前回、中小企業が持っている競争力の源泉と人材戦略の関連性を紹介した。
今回は、現在大きな問題となっている地方圏の中小企業における人材不足問題とその改善策の1 つになるであろうインターンシップ制の活用について調査データと新たな企業事例とともに紹介していく。
1. 不足している人材
2002年をボトムとして景気回復が持続しており、労働市場では人手不足の傾向が強まってきている。こうした中で、元々人材を採用しにくい中小企業は、さらに厳しい状況に置かれつつある。人手不足の傾向は、地方圏に立地する中小企業にも影響してきている。
ただし、地方圏の多くは、依然として求人と求職の需給関係を示す有効求人倍率が1倍を下回っており、量的には買い手市場のままである。だが、地方圏で深刻なのは、人材の量よりも質の問題である。企業が期待する、あるいはほしい人材がいないのである。
地方圏に立地する企業が、不足している人材の内容を見たのが、図表1である。もっとも不足しているのは「技術系管理職」(29.9%)であり、次いで「営業、マーケティングの人材」(29.2%)、「経営トップの補佐役」(24.3%)、「製造現場の人材」(23.8%)などとなっている。地方圏の中小企業では、技術、営業・マーケティング、経営、製造といった企業経営の根幹にかかわる職種に、幅広く人材不足が見られる。
なお、規模別に見ると、小・零細企業では、経営トップの後継者や補佐役が、比較的規模が大きな企業では、「研究開発・設計の技術者」の不足が目立っている。
また、「自社の競争力」との関連をみると、自社の強みに直結した人材を挙げる企業が多く、製品開発力に強みを持つ企業では「研究開発・設計の技術者」(33.6%)が、加工技術力に強みを持っている企業では「技術系管理職」(47.5%)や「製造現場の人材」(46.1%)が、営業・販売力に強みを持っている企業では「営業、マーケティングの人材」(41.1%)が不足している。自社の強みを強化していく上で不可欠な中核的人材の不足感が強まっている。