人事の職場拝見! 第36回 社員一人ひとりの才能と情熱を解き放つ 経験学習で促す個と組織の活性化
2012年4月、経営層の交替に伴いスタートしたヤフーの人事制度改革。その中核となっているのが、社員の内省を促し、主体性を引き出す「経験学習」を基盤とした人材開発だ。ヤフーにとって人材開発は組織開発の柱でもあり、組織全体の活性化を導く大きな役目を担っている。
主体性と成長意欲を兼ね備えた人材を育成
ヤフーは2012年4月、インターネットテクノロジーによって社会のあらゆる課題を解決する“課題解決エンジン”を新たな企業ビジョンに掲げた。このビジョンに共感し、具現化できる人材を理想に、かつ「才能と情熱を解き放つ」を人材開発のキーワードとして人事制度改革に取り組んでいる。その中で、一人のリーダーがリーダーシップを発揮して組織を動かすのではなく、フォロワー一人ひとりが主体的に行動し、その小さなリーダーシップが連鎖して、ボトムアップの力で事業を成し遂げていく体制づくりをめざしてきた。ピープル・デベロップメント本部組織開発室室長の吉田毅氏は、「ユーザーや広告主などステークホルダーが抱えている課題に向き合い、最前線に立っているのは現場のフォロワーです。社長や副社長ではありません。彼・彼女らの主体性で物事を動かしていくことが重要であり、人材開発ではその主体性の源泉となる成長意欲を醸成することを重視しています」と話す。
内省を次の業務に生かす経験学習サイクル
ヤフーの人材開発の特徴は、挑戦的な経験と内省、そこから得られる教訓やコツを次のアクションへとつなげる“経験学習サイクル”にある。そのコアとなる施策が全社で展開している“1on1”だ。毎週30分間、上司と部下が1対1で面談を行うのだが、上司のコーチングと部下の主体的フォロワーシップに基づく相互のコミュニケーションが肝となる。単なる業務報告とそれに対する指示では終わらず、1週間を振り返り、内省して翌週の業務へと生かす機能を果たしている。