おわりに 成長につながる教育体系にするため「カタ」よりも大切なこと
「必要な教育は都度行っているが、体系立っていない」「見直しが必要だと思うが、何から手を付けていいのかわからない」「教育体系はあるものの、なかなか社員に浸透していない」―― 。人材育成施策の根幹となる教育体系について、そのような課題を抱える企業は少なくない。特に近年は社会の環境変化が激しく、働き方や価値観も多様化している。人的資本経営の気運も高まり、改めて自社の人材育成や教育体系に目を向けるべきときでもある。
そこで本特集では、教育体系を従業員の成長、企業の成長につなげるための構築や見直しのポイントについて考えてみた。
自律的キャリア形成と企業の成長の連動
まず、多くの企業で教育のトレンドとして挙げられるのが「自律的キャリア形成」といえる。主体的な学習や成長、またキャリアオーナーシップなど、個を主体にした育成に舵が切られている時代だと中央大学大学院教授の島貫智行氏(OPINION1)は話す。会社側が学んでほしい教育を提供するだけでなく、本人がどのようなキャリアを歩みたいか、そのために何を学びたいかという視点が欠かせないということだろう。
ただ、そこで考えなければならないのは、自律的な学びが企業の成長に貢献しているのかという点だ。個のニーズを満たすだけではだめで、充実した仕事経験が得られて初めて、個人はパフォーマンスを発揮でき、ウェルビーイングやエンゲージメントも高まると島貫氏は説明する。
ここで味の素(CASE1)の事例を紹介したい。同社では、手挙げ式の能力開発プログラムの充実と、キャリア自律施策を同時に運用することで、自身が将来のキャリアまで見据えて必要な学びを選択できる土台を用意している。