グローバル調査レポート 第7回 ~アンケート調査から読み解く~ 日本企業における英語力の必要性と世界各国のTOEICテスト受験者の実像
TOEICテスト、TOEICスピーキングテスト/ライティングテストを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)では、グローバル人材育成や企業で求められる英語力等に関するさまざまな調査を実施し、発表している。本稿では、全上場会社に対して2年に一度行っている調査「上場企業における英語活用実態調査」ならびに、世界におけるTOEICテスト受験者について初めて紹介した「TOEICテスト Worldwide Report」から、日本企業における英語力の必要性と、世界のTOEICテスト受験者の傾向を概観する。
第1部「上場企業における英語活用実態調査」より
2013年に上場企業3254社に対して実施した本調査では、日本企業がグローバル人材育成に向けて重視する戦略や実施している取り組み、必要な英語力等について回答を得た。
1-1海外事業拡大を担う人材の育成が急務
近年、あらゆる業種、規模の企業がグローバルな事業展開を視野に入れるようになってきた。そこで企業が海外に進出するうえで重要視する人材戦略を聞いたところ、5割以上の企業が「海外で勤務できる人材の育成を推進する」と回答。次いで「本社で国籍問わず優秀な人材を採用する」「海外拠点で現地ナショナルスタッフを雇用する」「社員全体の英語力向上を推進する」と続いている(図1)。一方、企業がグローバル人材育成のための取り組みとしてまず実施しているのは「英語研修」(78.5%)であり、「一般社員が海外経験を積める機会の提供」(59.5%)や「他国の風習や価値観を学ぶ等 異文化理解研修」(37.2%)よりも圧倒的に多く、企業が積極的に英語研修に取り組んでいることがわかる(図2)。2011年に行った前回調査の「英語研修」(44.2%)、「一般社員が海外経験を積める機会の提供」(38.8%)という数値と比較すると、グローバル人材育成に向けた企業の取り組みが大きく広がっていることもわかる。ちなみに、グローバル人材育成への取り組みの例として、本調査からではないが1つ事例を述べると、ある企業では、3年以内に海外勤務要員のプールを3倍に増やすというゴールを設定した。このゴールに向け、若手社員を中心に英語力の到達目標を見直し、また、異文化へのタフな適応力をも育成するために研修体系を見直したという。その背景には、海外事業の伸長ペースに人材供給が追いつかず、海外赴任のローテーションが回せない、つまりいったん海外赴任となると後任がなかなか決まらず、特定の社員だけが長年駐在せざるを得ないという事情がある。
1-2国際部門の社員に求められるTOEICスコアは700点以上
また本調査では、TOEICスコアを1つの基準に、企業で求められる英語力についてさまざまな角度から質問している。まず、グローバル化に伴う業務遂行に必要なTOEICスコアについて聞いたところ、全社員に対して求めるスコアは「500~595点」(24.7%)、「600~695点」(20.9%)であり、500点台・600点台が半数近くを占めている(図3)。一方、より専門的にグローバルビジネスに特化して業務を行う国際部門の社員に対しては、68.6%の企業が「700点以上」を期待している。いずれにしても国際部門ならびに全社員に対して一定の英語力を求めていることがわかる。