船川淳志の「グローバル」に、もう悩まない! 本音で語るヒトと組織のグローバル対応 第1回 「無知の知」に気づけば、学び続けられる
多くの人材開発部門が頭を悩ませる、グローバル人材育成。グローバル組織のコンサルタントとして活躍してきた船川氏は、「今求められているグローバル化対応は前人未踏の領域」と前置きしたうえで、だからこそ、「我々自身の無知や無力感を持ちながらも前に進めばいいじゃないか」と人材開発担当者への厳しくも愛のあるエールを送る。
グローバル化と向き合ってみよう
今年の年明け早々、ある新聞社から「グローバル人材の由来について教えてほしい」という依頼を受けた。どうやら、1年前に本誌で問題提起をした「グローバル人材についての混乱」は予想以上に大きいようだ※1。その中で、「日本企業の経営幹部層に、どこまで現在我々が直面しているパラダイム転換の本質を理解し、グローバル人材育成と組織の中身のグローバル化を推進する覚悟があるのだろうか」という点を挙げ、学ぶべきは経営幹部自らであることを述べた。しかし、経営幹部に「あなた方が学ぶべきだ!」と言える社員は少ないだろう。確かに、この課題の本質を理解している経営幹部は、「我々から学ぶべきというのはもっともだ」と言ってくれるが、残念ながら少数派だ。それどころか、「グローバル」に対するそれぞれの認識違いから、混乱、言い訳、先送りという「日本の哀しいお家芸」を繰り返している。そして、これは現場社員、管理職者にも当てはまる。しかも、「グローバル」に対するアレルギー反応を示す人、ネガティブなラベリングをする人も多い。つまり、人材開発担当者は「グローバル」に対するさまざまな悩みを抱えながら、「企業のグローバル化対応」と「グローバル人材育成」という先送りできない課題に取り組んでいるのが現状だ。そこで、これからこの課題に対応するために、何を、どう考えるべきかを共有していきたいというのが本連載の趣旨だ。結論から言えば、そんなに難しい話ではない。「グローバル」に悩んだり、ひるんだり、あるいは勘違いして暴走するのではなく、「グローバル」に向き合い、国内外を問わず、急速に変わっていくビジネス環境と仕事の原風景の中で、多くの人がその変化を楽しみ、生き生きと働いていけるヒントをつかんでもらえれば幸いである。
●誌上セッション自社のグローバル人材チェック
「グローバル人材と組織の課題を考える」と題した某企業の管理職者向け2日間泊まり込みのセッション。参加者に次の質問を出すことがある。皆さんも一緒に考えてみてほしい。
貴社の部長クラスで、新興国も含めて現地法人のマネジメントができる人はどのぐらいいますか(%)
スライドの設問に加えて、口頭で補足する。「キーワードは『新興国も含めて』という部分です。皆さんの主観で結構ですから、数字を書いてみてください」。約20名の参加者が各自与えられた手元の付箋に書き終えるのを待ち、次のスライドを見せる。
貴社の課長クラスで、今、海外のプロジェクトを任せられる人はどのぐらいいますか(%)
「プロジェクトとは、例えば海外企業の買収であったり、工場の立ち上げなど、さまざまなものを想像していただいて結構です」と補足する。そして、この設問の最後のスライドだ。