CASE.1 組織風土と仕組みで支える 各自の「やりたいこと」を実現できる環境が楽しさを生む
漫画名刺、サイコロ給などユニークな制度が有名なカヤック。「面白い人より、面白がる人になれ」という同社では、「楽しさ」を大切にしている。同社が定義する楽しさとは何か、そしてそれをサポートする仕組みを紹介する。
●楽しさとは何か自分のやりたいことを仕事につなげる意識を持つ
自ら面白法人を名乗り、オリジナリティー溢れるWebサービスやスマートフォンアプリなどを次々と生み出しているカヤック(本社:神奈川県鎌倉市)。同社は、社員が自分で振ったサイコロの目によって基本給にプラスアルファの手当を決めるというサイコロ給(人が人を評価するなんて、気分ひとつで変わるようないいかげんなものと捉え、評価に一喜一憂しないようにあえてサイコロ給を導入している)をはじめとするユニークな制度や採用活動でも知られる。
例えば、今年1月に行った採用イベント「1社だけの合同説明会」は、社員に立候補してもらい、カヤックの魅力を話してもらった。それだけでもユニークだが、その中で、同社の内定を受けながら最終的に辞退した人がカヤックについて語る「内定辞退者ブース」も設けたという(もちろんこれも立候補である)。「面白さの追求は、カヤックにとってブランディングの1つ。外に対するアピールという要素もあります」と語るのは、同社の人事部門を担当する坂上香氏。では、社員たちは日々どんなふうに働いているのだろうか。社内は、面白さや楽しさに満ちているのだろうか。「楽しく働けることは、カヤックにとって非常に大切なテーマです。年2回、人事評価の際に自己評価を書きますが、最初の質問は『この半年間、楽しく働けましたか』ですから、評価項目としても重視しています。ですが、ゲラゲラ笑いながら仕事をしているわけではありません(笑)。カヤックの社員はデザイナー、エンジニア、ディレクターがほとんどですが、みんなモノづくりに対して真剣で、本気で議論することもしばしばあります。そういう意味では笑いも多いけれど本気でぶつかることも多い会社です」(坂上氏、以下同)
では、カヤックにおいて「楽しく働く」とは、何を意味するのだろう。「自分のやりたいことが仕事につながり、それがきちんと評価されるというのが、一番楽しめている状態だと思っています」それでは、もしも楽しく働けていない社員がいたらどうするのか。「自己評価で『楽しめていない』と答えた場合、『どうしたらもっと楽しくなると思いますか』というのが次の質問になっています。この内省を繰り返すことが、自分がやりたいことに近づくための1つの原動力になると考えているからです。ただし、特に若手社員については、環境づくりや組織面でのフォローも重要だと考えています。本人とじっくり面談をして目標を見つける手伝いをしたり、チームが楽しめていないようなら人事異動を行ったりしています」さらに話を伺っていくと、同社には、やりたいことが仕事につながるチャンスと自分の仕事ぶりを仲間からきちんと評価してもらえる仕組みがいくつも存在し、全社員の「楽しく働く」をパワフルに支えていることがわかってきた。