OPINION 2 心を整え、ご機嫌カンパニーになろう 一流選手も取り組むパフォーマンスを高める方法
楽しいかどうかは、自分の心の状態次第。その心を整えるプロが、スポーツドクターの辻秀一氏だ。数々のスポーツ選手のメンタルトレーニングを行ってきた辻氏は、人のパフォーマンスを左右するのは、2つ――行動の「内容」と「質」、すなわち、どのような心の状態で、それを行うかだという。どうしたら一流アスリートのように心を整えてハイパフォーマンスを出し続けられるのかを聞いた。
ご機嫌だと仕事もはかどる
──仕事は辛いもので、楽しいものではないという考えが、日本企業では根強いように思います。
辻
そうですね。ストレスがかかって、それに耐えているのが仕事だと思っている方が多いですね。ですが、それはそもそも「楽しい」を勘違いしているのだと思います。例えば、何をしている時が楽しいですか。
──おいしいものを食べている時、楽しいです(笑)。
辻
いいですね。例えば、「おいしいものを食べている時」に「楽しい」。それはそうですよね。ですが、「楽しい」とは、「おいしいご飯を食べること」だと捉えていたら、仕事を楽しくするわけにはいかなくなります。仕事の時に、ご飯を食べられないし、どうするんだ、と。
──怒られますね。
辻
ほとんどの人は、心の状態は自分でつくれると思っていません。だから、自分にとって楽しい出来事があった時に、楽しいと思うわけです。「おいしいご飯を食べる」という出来事と、「楽しい」という心の状態がしっかり紐づいているんです。ところが、その出来事と心の状態を分けて考えて、自分の心を整える力を養うことで、いつでも質の高いパフォーマンスを上げられるようになるんです。もちろん、練習は必要ですが、一流のスポーツ選手なら、身につけている人が少なくありません。
──どのような心なら、パフォーマンスが上がるのでしょうか。
辻
パフォーマンスが上がるような心を「フロー」と呼びます。このフローは、シカゴ大学の行動科学を専門とするチクセントミハイ博士が提唱した理論です。チクセントミハイ博士は、宇宙飛行士だろうが、スポーツ選手だろうが、経営者だろうが、何をやっているかに関係なく、その人の心の状態がパフォーマンスの質を決定しているという研究をしました。フローを定義するのは難しいのですが、私は、フローを「揺らがず、とらわれずの状態」「ご機嫌」、ノンフローを「揺らいで、とらわれている状態」「不機嫌」と言っています。機嫌が悪かったり、苦しんだりするほうが、仕事がサクサク進むという人などいません。人間は必ず、「機嫌がいいほう」から「機嫌が悪いほう」の間のどこかにいるわけですから、それなら、「機嫌がいいほう」がいいということです。