TOPIC『人材教育OPINION セミナー』 研修の幅を広げる新しいワークショップデザイン入門セミナー 若手ワークショッパーがワークショップ実施のコツを伝授
誰もが一度は「ワークショップ」を体験したことがあるだろう。しかし、その目的や方法を正しく理解したうえで実施され、意図する効果が引き出せているだろうか。本セミナーは、小誌2014年3月号で対談した(52ページ「若手研究者対談ワークショップにまつわる深ーい誤解」)、舘野泰一氏、安斎勇樹氏を講師に、その基本的な考え方やデザインの仕方について、実際にワークショップ形式で学ぶものである。当日の様子を紹介する。
開催日:2014年5月26日
会 場:ベルサール新宿グランド コンファレンスセンター
講 師:舘野 泰一 氏 (立教大学経営学部 助教)
安斎 勇樹 氏 (東京大学大学院情報学環 特任助教)
本セミナーの主な参加者は、自社の社員教育や課題解決のためにワークショップを効果的に実施したいと考えている方々である。グループワークがしやすいよう、参加者はあらかじめ6つのグループに分けられ着席している。セミナー前半の趣旨は、まず「ワークショップとは何か」を理解するというものだ。導入部分では、アイスブレークとして、グループごとに図1の自己紹介ツールを使いながら、職場の課題を病名に喩えてみたり、「ワークショップ」を別のものに喩えて一言で述べるといったワークが行われ、アイデアがシェアされ、盛り上がりを見せた。
「創ることで学ぶ」活動
続いて、舘野・安斎両講師により、ワークショップへの理解を深めるための講義が行われた。そもそも「ワークショップ」とは何か。安斎氏は、次のように語った。「ワークショップとは捉えどころがなく、定義するのがとても難しい手法です。昨今開催されているものも、参加者属性からも形式やテーマもさまざまで、実に多様なものが“ワークショップ”と呼ばれています。そこで私は、ワークショップを『創ることで学ぶ活動』としてシンプルに定義しています」さらに、「普段とは違うテーマで、新しいものを創り出すために、普段とは異なるものの見方を体験するもの」。そして、その過程で新しい学習の生起をめざすものであると続けた。ワークショップで創る対象もさまざまだ。必ずしもモノを生み出すというわけではなく、アイデアだけを出し合う場合もある。個人で創る場合もあれば、集団で話し合いながら創る場合もある。共通しているのは、当たり前のことを「問い直す」ことや、新たな何かに「気づく」ことを目的としていることである。
扱いやすい/扱いにくい課題
では、そうした「創ることで学ぶ活動」は、企業の研修や課題解決の手段として有効といえるのだろうか。舘野氏は、「ケースバイケース」であり、ワークショップで扱いやすい課題と扱いにくい課題があるという。「まず、ワークショップの“使いどころ”を理解しましょう。ワークショップを企画している方々から相談を受ける際、深く話を聞くと『それはワークショップで扱う必要がないのでは』と感じることがよくあります。課題によっては、これまで行われてきたインストラクショナルデザインの考え方を使ってデザインしたほうが有効な場合も多いのです。例えば、“グローバル化と英語”という課題で『英語力を身につけること』を目的とするならば、語学習得がゴールになるので、ワークショップ形式にする必要はないかもしれません。しかし、もう少し広く、『新たな言語を理解することの楽しさ』を学ぶなどのテーマ設定をすれば、ワークショップである意義が出てきます」