CASE.1 NEC 海外事業拡大を見据えた育成策 入社1、2年目社員を海外派遣し社内にグローバル化への変革意識を醸成する
モノづくり企業から社会ソリューション事業で世界に挑戦する企業に変貌するNEC。その事業を遂行していくにはグローバルで戦う意識の醸成だ。入社1、2年目社員から海外研修を実施するなど、急速に進むグローバル化に対応する同社の人材育成策を担当者に聞いた。
●事業構造の変化モノづくり企業からの変革
NECは2013年度から「2015中期経営計画」をスタートさせ、事業構造の大きな転換とグローバル展開の中でもアジアに力を置く戦略を進めている。まず事業構造だが、従来はパソコン、携帯電話といったコンシューマ製品のイメージが強かった。今注力しているのは「社会ソリューション事業」である。NECが保有する情報通信技術を活用して社会インフラをより高度化し、安全安心で効率的、公平な社会の実現をめざす事業だ。もちろん日本や欧米にも社会ソリューション事業のマーケットはあるが、世界の中で最も社会インフラ整備の必要性が高いのはアジア諸国であるとNECは考える。それがアジアマーケットの注力につながっていく。「多くの技術の種が日本のNECにあります。それをどのように組み合わせてアジア各国のニーズを満たすビジネスモデルを構築していくかがカギになります」と人事部シニアエキスパートの籔本潤氏は説明する。具体的に社会ソリューション事業は「パブリック」「テレコムキャリア」「エンタープライズ」「スマートエネルギー」の4分野で構成される。
パブリックは官公庁向けビジネスだ。日本で展開してきた防災システムや、NECが世界トップの精度を有する指紋や顔による生体認証の技術を活かしたセキュリティシステムなどを世界に売り込んでいく。テレコムキャリアは、通信事業者向けに通信ネットワークを構成する機器やソフトウェア、さらに通信事業を効率的に行うためのさまざまなサービスをグローバルに提供する事業だ。エンタープライズは民間向けビジネスで、流通や物流、交通の利便化、効率化を図る。スマートエネルギーはNECの蓄電池技術などを使い、エネルギーの自立・分散・多様化を支えるソリューションを提供する。他の3分野に比べると、日本や欧米も含めてこれから市場が拡大する事業だといえる。
●求めるグローバル人材像育成上の2つのポイント
社会ソリューション事業を柱に、マーケットとしてはアジアを重視するNECにとってグローバル人材の育成を考えるうえで2つのポイントがあると籔本氏は指摘する。「1つはNECの技術を活用して社会問題を解決する新しいビジネスモデルを組み立てられる人材の育成です」