OPINION 2 「現地化」と「グローバル化」で育成は変わる アジアで信頼関係を築く3つのマインドセットとは
成長著しいアジア新興国への進出が重要視される中、日本人駐在員の育成にも、ローカル人材の育成にも課題を抱えている日本企業が多いのではないだろうか。また、風土や文化、価値観、習慣などの違いから、現地の人と不必要な摩擦を起こしてビジネスが停滞、頓挫してしまうケースも散見される。中国やインドをはじめ、アジア各国における人材マネジメント事情に詳しい九門氏に、こうした課題解決の考え方や具体策を聞いた。
「つくる」から「売る」へ
アジアはモノをつくる場所から、モノをつくって売る場所に大きく変わった。中国をはじめ、人口12億人超のインド、2015年に10カ国が共同体として成立し6億人超となる東南アジア諸国連合(ASEAN)を巨大市場と捉えて意識転換することが人事においても重要だ。旧来通り、アジアを工場と捉えていれば、日本流のモノづくりに長けた日本人が現地に赴き、現地のワーカーにOJTを通して技能伝承を行えばよい。しかし、市場と捉えれば、それだけでなく、顧客ニーズの把握、それを反映した商品開発、現地の商習慣に合致した販売などを行う必要がある。それらは日本人だけでは絶対にできない。現地に精通したローカル人材の協力が必要不可欠になる。工場から市場へと意識転換を図ることで、ローカル人材に求める能力や仕事が変わり、同時に日本人駐在員の役回りも大きく変わることがわかる。
「現地化」と「グローバル化」
日本企業の多くがもともとアジアを工場と捉えて進出し、現在、市場として捉え直しているのに対して、P&Gをはじめとする欧米企業は進出当初からアジアを市場と捉えている。また、大半の日本企業は現地法人の「現地化」が課題となっているが、欧米企業はすでに「現地化」が進んでいるケースが多い。また、P&Gなどグローバル企業では「人材のグローバル化」を進める企業もある。ここでいう人材のグローバル化とは、ダイバーシティに富む人材活用を指す。この点も大きな違いだ。現地法人の現地化とは、中国であれば中国人を経営幹部などに登用して、なるべく日本人駐在員を少なくしていくことだ。営業はもちろん、マネジメントも現地のローカル人材に任せていこうとする。他方、人材のグローバル化とは、中国であっても中国人だけでなく、欧米人や他のアジア人など、さまざまな国籍や背景の人々が一緒に働く組織をつくることである。欧米企業はもともと多国籍の人が働く組織であるため、現地法人であっても、国籍問わず最適で優秀な人材を活用するという発想だ。ここで重要なことは、自社が人材の現地化とグローバル化のどちらを進めようとしているかだ。それによって、日本人駐在員とローカル人材の育成方針が変わってくる。