CASE.2 ワークスアプリケーションズ エントリーマネジメントこそ、最重要課題 ゼロから1を生み出せる「クリティカルワーカー」を発掘
大手企業向けの経営インフラを提供するワークスアプリケーションズ。同社の採用の要諦は、問題解決能力のある人材を発掘することに尽きる。そのため、採用を最優先の経営課題と位置づけ、独自のインターンシッププログラムを通して素質のある人材を見極めている。そのエントリーマネジメントは、実際どのように行われているのか。同社の鶴田麻衣氏に伺った。
●考え方・背景 シリコンバレーでの興奮が発端
20日間のインターンシップを、採用目的で春夏2回、年間1000人もの学生に実施するワークスアプリケーションズ。その内容は、通常のインターンシップのように、オフィスで社員を補佐するというものではなく、会場を借り切って一人ひとりの潜在能力を測るというものだ。その間、マネジメントに携わっている正社員が直接指導や面接に当たる。採用コストは年間数億円にのぼるという。なぜ、そこまで大きな投資をするのだろうか。
「採用は最優先の経営課題です」と語るのは、同社のリクルーティングDept.プランニング&ディレクションGrp.の鶴田麻衣氏だ。同社が採用、研修を含めたエントリーマネジメントにかける熱意の源は、創業時にまで遡るという。
同社が創業した1996年当時、企業が自社で使用する経営インフラを構築する際には、多くの場合は外国製のパッケージ製品を自社業務に沿ってカスタマイズするか、全てを個別に、一から開発するスクラッチ開発が主流だった。そのため投資コストは膨大になり、日本企業の成長を阻む要因の1つと言われていた。
一方、欧米ではすでにパッケージソフトを使うことが主流となっており、より安価なコストシェアの考え方が浸透していた。ワークスアプリケーションズを創業した牧野正幸氏は、ノーカスタマイズの国産パッケージソフトの開発と販売にこだわり続けているが、それにはこうした背景があったからだ。
日本企業の情報投資効率を世界レベルへ──この考え方を同社の経営における第一の理念とするなら、もう1つの成長エンジンというべき柱が、「クリティカルワーカー(詳細は後述)に活躍の場を」という人材開発の理念だ。
牧野氏は、かつてシリコンバレーのITベンチャー企業と多くの仕事を経験したという。世界の才能が集積するこの地に赴き、受けた衝撃は、名もなき新興企業に優秀な人材がどんどん入り、必死になって働いている姿を目の当たりにしたことだった。彼らがあえてチャレンジングなキャリアを選択するのは、そうした環境のほうが、自らが圧倒的に成長できると考えているからだった。
だが牧野氏は帰国後、さらなる衝撃を受けた。日本には、前例のない仕事に挑戦し、自らの思考でブレークスルーしようとする人が極端に少なく、そもそもそういうイノベーションを起こせる資質を持った人が活躍する場すらなかったのだ。
それが創業の2つめの理念──採用を軸とした人材開発への熱意となって表れる。
●求める人材像 クリティカルワーカーとは
同社が定義する、「クリティカルワーカー」とは、「前例のない仕事に取り組み、自らの思考、発想でブレークスルーする人材、問題解決能力の高い人と定義しています」(鶴田氏、以下同)
そして、その問題解決能力とは、2つの要素から構成されているという。1つは高い論理的思考力、もう1つは高い発想転換能力(クリエイティビティ)だ。これらが両輪となって、前例のない問題に対して自ら解決方法を考え、実行することを可能にする。同社の採用活動とは、この能力を見極めるための施策であり、インターンシップはその実践なのである。