CASE.2 サントリーホールディングス 体験を積む場としての新人研修 「主体性」と「協調性」を軸に社会人への意識の切り替えを図る
1899年の創業以来、「やってみなはれ」の精神で成長を続けるサントリーグループでは、新入社員が入社1年後にめざす姿を明確に示し、Off-JTとOJTを連携させた育成に取り組んでいる。その考え方や育成方法などを取材した。
●育成の考え方1年後にめざす姿を明確化
サントリーホールディングス(以下、サントリー)では、入社1年後までを新入社員の育成重点期間と位置づけ、OJTとOff-JTを連携させた育成を行っている(図1)。
新入社員は入社後、合宿形式による約2週間の「入社時集合研修」を経て、各職場へと配属される。配属後は現場でOJTを受ける傍ら、非生産部門に配属された人は生産実習、非営業部門に配属された人は営業実習などのOff-JTに随時参加する。
1年目終了時にめざすべき姿も明確にしており、ピラミッド状に3つの層で表している(図2)。一番下の「新入社員として発揮すべき基本姿勢」と真ん中の「新入社員として必要な基本スキル・知識」は全部門に共通する土台部分であり、この部分のOff-JTをキャリア開発部が担っている。そして、新入社員が配属になる部署では、この2つに上の「担当業務において必要な基本スキル・知識」を加えた3つを、OJTを通じて育成する。
新入社員が“働く自己(構え)をつくる”ために、サントリーが特に重視しているのが一番下の「基本姿勢」──「主体性」と「協調性」だ。キャリア開発部課長の田端昌史氏はこの基本姿勢について、次のように語る。
「例えば、上司や先輩から資料整理を頼まれたら、それをきちんとこなすことはもちろん、なぜその仕事を自分に指示したのかという、仕事の目的と意味を考えることが重要です。すると、それが自分自身の成長にとって必要な業務であることがわかり、最後まで責任を持ってやり遂げようという気持ちになるでしょう。そして、他にも未整理の資料がないか探してみたり、ファイリングのルールを提案したりといった一歩進んだ行動に発展し、上司や先輩からの信頼につながるかもしれません。
こうした主体性と協調性を身につけることが、社会人として働いていくためのベースになると我々は考えています」
「主体性」と「協調性」は、より具体的に理解しやすいよう、それぞれ3つずつの取り組み姿勢に分解して示している(図3)。
「以前は主体性と協調性というキーワードだけで育成を行っていました。しかし、上司や我々が新人に対して主体性や協調性の欠如を指摘しても、新人本人は、『自分はきちんとやっている』と認識していることが多く、そのギャップが大きかったので、より具体的に表現することで、互いのギャップを埋めるようにしたのです」(田端氏)
一方、新入社員として必要な“基本スキル・知識”を学んでもらうために、「考動発揮ガイドライン」という表を使い仕組み化した(図4、2006年~)。まず、“基本スキル・知識”を、「対仕事力」「対人力」「対自分力」「サントリアン(サントリー社員)の基本」の4分野・12項目と明確に定め、それらを達成した際の姿や、達成までに行うことをスケジュールと共に記載する。そして1年間、本人と上司で項目ごとに5段階評価をして振り返りを行えるようにした。