TOPIC スタンフォード大学心理学教授 キャロル・ドゥエック氏に聞く マネジャーが前向きなマインドセットを高める方法
ビジネス環境の変化が激しさを増す中、企業が顧客に対して高い付加価値を提供し続けるためには、継続的な変革、成長が必要だ。組織でそれを実現するために中核的な役割を果たすのがマネジャーである。では、マネジャーたちが、部下の本来持っている能力を高め、よりよい成果に結びつけるためにはどうすればよいのか。そうした人の能力発揮に密接に関連する心の持ち方、「マインドセット」について、『「やればできる!」の研究』(原題:『Mindset』)の著者であり、米国スタンフォード大学心理学教授の、キャロル・S・ドゥエック(Carol S. Dweck)博士に話を聞いた。
fixedマインドセットとgrowthマインドセット
――まず最初に、あきらめずに最後までやり抜くためのマインドセットの重要性とは何でしょうか。
ドゥエック
マインドセットはその課題に関し、非常に重要な役割を果たします。マインドセットには、「fixedマインドセット」と「growthマインドセット」の2種類があります。fixedマインドセットとは、自分の能力は成長せず固定してしまっていると思い込む心の状態です。そうなると、他人から見て「できない自分」が無能に見えてしまい、チャレンジが必要な状況を避けてしまうのです。このマインドセットを持つと、「ミスをするかもしれない」「足止めをくらうかもしれない」「失敗するかもしれない」などと萎縮し、自身の能力を疑ってしまいます。一方、growthマインドセットとは、「自分の能力は開発して高めていくことができる」と考える人たちが持つ心の状態。彼らは、チャレンジすることで新しい能力を身につけられると信じていますから、チャレンジが必要な難しい課題を歓迎します。ミスや失敗は仕事をしていくうえで自然に起こりうるという前提のもと、チャレンジを続ければ将来の成功を得られると考えるのです。それが、「あきらめずに頑張り続ける」という気持ちの土台になります。ここシリコンバレーには「早めに、たくさん失敗しろ、そしてすぐに成功しろ」という諺があるくらいです。
マインドセットは変更可能
――マインドセットは場面によって変わるものでしょうか。
ドゥエック
多くの研究によって、人はマインドセットをfixedからgrowthへと、段階的に変えていくことができると証明されています。そして、同じ人でも、分野や状況によって異なるマインドセットを併せ持つことも可能だと思います。例えば、数学的能力に関してはfixedマインドセット、他の分野に関してはgrowthマインドセットを持つ、といった具合に、です。