HOW TO 人事の付加価値を生む 研修のつくり方
年間プログラムを埋めるための、「研修をやるための研修」になっていないだろうか。そもそも研修は、何のために行い、人材開発の存在価値はどこにあるのか。企業の人材開発領域で経験を積み、現在はコンサルタント、ファシリテーターとして外部から企業のさまざまな研修、ワークショップにかかわる由佐氏に、人材開発部の存在意義も踏まえて、研修のつくり方を聞いた。
1.目的を考える研修は、何のためにするのか
──改めて研修のつくり方を知りたいという要望があります。
由佐
「何で研修をするべきなのか」という初めの問いが欠けているのではないかと感じることが多々あります。「研修のための研修」になってしまっていることが問題です。そもそも研修はしないで済むならばそれに越したことはないと思っています。
「この忙しい時期に研修なんて」と迷惑がる社員も多いですよね。それなのに、わざわざコストをかけて、現場を離れて研修に参加してもらう。つまり、人材開発部は現場にそれだけの投資をする価値を認めてもらえるようなものを提供しなければなりません。現場に価値を認めてもらえる研修をすることが、研修の目的ですし、人材開発部が出すべき付加価値です。
──どうしたら、現場に価値を認めてもらえるでしょうか。
由佐
企業の人事として働いていた時に、どうしたら信用してもらえるか、価値を認めてもらえるのか、ずっと考え続けた時期がありますが、「現場では決してできない学びの体験」を提供することしかないのだと思います。「何が現場ではできないのか」と言うと、今の時代、ロジカルシンキングやその他のフレームワーク、簡単なコーチングスキルなどのハウツーを知りたければ、ネットや書籍で間に合います。こうしたスキルや知識を、研修のように場を設けて、わざわざ人を集めて学ぶ必要はもうありません。カギになるのは、「『場』、つまり人間が互いに学び合うという場を用意しないと、できないものは何か」という視点です。
──現場を離れることに意味がある、ということですね。
由佐
はい、日々現場で働いていれば、業務を回す力は伸びますよね。けれども、例えば、歯磨きの最中、「歯を磨く」行為をわざわざ意識することは少ないでしょう。それと同じように、日々の業務に慣れてしまうと、人はほとんど考えなくなります。やるべきことが習慣化するからです。効率的に作業をこなすためには必要ですが、これを続けているだけでは、さらなる成長は望めなくなります。「現場でできないこと」というのは、ここです。慣れた通常業務の中で、「全く違う視座を身につける」「新たな意識に変わる」というのは、難しいのです。ですが、人の成長や学びには、これが必要不可欠です。特に最近は分業化や組織のフラット化により、ジョブローテーションが難しくなりましたから、同じ部署やポジションで長い間同じ仕事をする社員も多い。そうすると、飛躍的に伸びる機会がますます望めなくなります。だからこそ研修で、「あの場があったから、今の自分はこのレベルの仕事ができているんだ」「あの場の気づきがあったから、今の自分がここにある」と思ってもらえる人を出すことに価値があります。
POINT
●「研修の価値をどう提供するのか」を問う。●研修をする目的は、「現場ではできないこと」を提供するため。