グローバル調査レポート 第5回 日本企業にとってのMust Win Battle: グローバル人材マネジメント
人事領域におけるグローバル化への取り組み強化が叫ばれて久しい。ヘイグループが行った、人材マネジメントに関するグローバル調査でも、海外先進企業と比較して、日本企業に大きな課題が存在することが明らかになっている。日本企業は、この現状に対して危機感を持つものの、なかなか有効な方策が打ち出せないでいる。具体的にはどんな項目が進んでおり、どんな項目への取り組みが足りず、どんな手を打っていくべきなのか。調査結果とともに考察する。
1.日本企業共通の課題:人事領域のグローバル化
P&G、マイクロソフト、GE、コカ・コーラ、ユニリーバ。これらは、ヘイグループが実施した2013年ベストリーダーシップ企業調査のトップ5である。今回の調査には、全世界で2,200社1万8,000名が参加し、リーダーシップ開発に優れた企業を、他社推薦と回答者による自社評価の両方から、グローバルに選出している。図1は、そのトップ20の企業リストである。人事領域の取り組みにおいて、ベンチマークとされる企業が多く含まれているが、トップ20にランクインした日本企業は、19位のトヨタ自動車のみである。これらトップ20の企業と、日本企業を比較してみると、日本企業の課題がいくつか浮かび上がってくる。図2は、ベストリーダーシップ企業調査の設問から、グローバル化や人材育成に関する設問をいくつか抜粋したものである。組織内の重要な役割に対する後継者管理、それらのポジションでの後継者候補の充実度、経営幹部の人材育成に対するコミットメント、異文化・多様性の中でのリーダーの業務遂行能力、異なる場所にリーダーがいる状況での業務遂行状況など、トップ20のスコアと日本企業の平均値を比べると、大きな差が存在することがわかる。しかし、それ以上に気になるのは、トップ20はおろか、全体平均と比較しても、日本企業は大きく劣後していることである。日本企業がそのことに気づいていないかというと、そうではない。事実、さまざまな日本企業の経営者や人事部の方々とお話しすると、人事領域のグローバル化に対して、大きな危機感をお持ちであることがひしひしと伝わってくる。問題は、これだけ人事領域のグローバル化が遅れている状況を目の当たりにしても、どこから手をつければよいのか、いったい何をすればよいのか、具体策が打ち出せていないことである。
2.日本企業の取り組み状況と傾向
日本企業が今後、人事領域におけるグローバル化にどのように取り組むべきかを考えるうえで、今の日本企業の取り組み状況や傾向は1つの参考になる。日本のヘイグループでは、2011年9月に、グローバル人事に関するアンケート調査を実施した。同様の調査は、2006年にも実施しているが、この時の調査では、各業界をリードする58社から回答をいただいた。この調査結果を分析すると、3つのメッセージが浮かび上がってくる。