TOPIC 2 『海外へ飛び出せ!!ラーニングプロフェッショナル』セミナーレポート ASTD ICE 2013と中国人材育成の現場を踏まえた海外人材育成の最新動向
2013年10月30日、海外人材育成事情、またIT業界の人材育成に関するセミナー「海外へ飛び出せ!!ラーニングプロフェッショナル」が開催された(主催:IT人材育成事業者協議会)。事業のグローバル展開が本格化し、IT技術の発展で学びそのものの形も大きく変化している今、企業が人材育成の質を高めていくにはどうしたらよいのか、ヒントが得られる場となった。その一部を紹介する。
「海外へ飛び出せ!!ラーニングプロフェッショナル」と題し行われた本セミナー。第1部の基調講演は、ASTD(米国人材開発機構)からわかる人材育成の潮流、第2部の基調講演は、中国で事業や人材育成を行うためのヒント、第3部では、研修情報の標準化フォーマットに関する情報が提供された。
世界最大の人材開発会議「ASTDICE 2013」がテキサス州ダラスにて、2013年5月19~22日にかけて開催された。その会議で気になった人材育成のキーワードを、寺田氏は「A、mL、C、E、F、M」という6つの頭文字にまとめた。以下、順番に見ていく。
●A→ASTD ICE 2013ASTD ICE 2013では300ものセッションが行われた。参加者は約9,000人、そのうちアメリカ以外からの参加者は、約2,200人で、前回同様、韓国、カナダ、中国からの参加者が多く、近年は中南米、中東の国々も着実に参加者を伸ばしている。本大会で一番印象に残ったことは、そのスタイルが様変わりしていること。TwitterやFacebookといったSNSの普及により、これまで会場に足を運ぶ前にはわからなかったセッションの詳細がわかるようになった。一方、その弊害も感じられた。参加者は、会場に行く前にすでに情報交換し、セッションの内容を知っているため、講演者と対面して聞くという姿勢に欠けているように見える。さらに、SNSを使った発信に集中している人が多く、セッションの緊張感が損なわれ、違和感を抱く場面もあった。
●mL→mobile Learningモバイルラーニングの時代が到来し、ビジネス上での情報交換や社員の教育に関しても、PCではなくスマートフォンやタブレットで行うことが当たり前になってきている。こうした時代を迎えて注目を集めているのが、小さい頃からITツールに慣れ親しんできた「Generation Y」といわれる世代だ(1960年~1974年に生まれた世代は「GenerationX」、その次の世代は「Generation Y」と呼ばれる)。この世代は、今から2、3年のうちに労働力の半数を占めるようになるだろう。この世代の人たちを教育する際の課題は、いかに上手にITツールを取り入れ、使いこなしていくかであるが、ASTD会員約500社のアンケートによると、モバイル端末を活用した企業内研修を行っている会社は、アメリカでも約25%に過ぎない。なぜモバイルラーニングが進まないのか。それは、使用する側のモラルとセキュリティの確保が障壁となっているからだ。たとえば、SNSに何気なく書き込んだ会社の内部情報が、後になって大きな問題となることがあるが、企業はこうしたリスクを恐れて、モバイルラーニングの導入に消極的になってしまうのだ。これを解決するためには、1.システム管理部門が適切なセキュリティコントロールをすること、2.コンプライアンス担当部門が会社情報の取り扱い方針を策定すること、3.人材育成担当部署が社員の責任に関する教育を行うことが考えられる。この3つの部門の協力なくしてモバイルラーニングの進展はないだろう。
●C→Curation