CASE.3 NetApp シリコンバレーに見る 100からスタートする信頼が 可能にする自由な働き方
優秀なエンジニアの採り合いが行われているシリコンバレーで、「働きがいのある企業」に常にランクインしているNetApp社。その理由は、自由な働き方を認める度量の深さにある。多様な価値観を持つ人材をどのように集めて力を発揮してもらっているのか。今回は、シリコンバレーで取材を行い、同社上級副社長のマクドナルド氏に取り組みを聞いた。
イノベーションを持続させる企業文化
ネットアップのグウェン・マクドナルド人事担当上級副社長の口からよく出る言葉は、「企業文化」である。もちろん、どんな会社も独自の「企業文化」があると訴えるだろう。だが、同社の場合は、「企業文化を日々生きる」「企業文化自体が目的」と同氏が言うほどに、徹底した共通意識、行動指針として社員に共有されている。データ・ストレージ技術を開発するネットアップの本社があるのは、サンフランシスコ空港から車で40分ほど南下したサニーベール市内。シリコンバレーの大小のテクノロジー企業が拠点を持つ地域だ。ここに12棟の建物を構え、建物の回りには芝生や遊歩道、池、バレーボール・コートなどが配置されている。
1992年に創業されたネットアップは、毎年のように「働きがいのある企業」の上位にランクされてきた。2013年度も、有名な「最も働きがいのあるグローバル企業」で3位、『フォーチュン』誌の「働きがいのある企業」では6位だ。シリコンバレーの企業はどこも、フレキシブルな勤務時間や無料のランチなど「パーク」と呼ばれる福利厚生が行き届いている。そんな中で、ネットアップが高ランクに入るのはなぜか。「その理由を説明するには、ネットアップの背景から始める必要があります」とマクドナルド氏は言う。初代CEOだったダン・ウォーメンホーヴンは、『ビジョナリー・カンパニー』(ジム・コリンズ著)のモデル企業として同社を構想し、イノベーションを起こすための持続可能な文化を携えた企業を打ち立てようとした。その際に案出したのが、実現のための方法論だ。方法論の基盤は、まずネットアップが誰のための企業であるかを明確にすることである。株主、社員、顧客、パートナー企業、近隣のコミュニティ。ネットアップを構成するこの参加者全員が、自らの企業活動によって利を得なければならない。そしてそれを達成するための方法論は、ネットアップの次の6つの「核心の価値」を共有することにある。
「リーダーシップ」「シンプリシティ」「透明性」「正しいことを行う」「やるべきことを達成する」「適応性」
現在、世界で1万3,000人の社員を擁する同社の社内方針は、状況によってさまざまな調整を加えなければならないだろう。だが、この価値は不動だという。