CASE.2 メトロキャッシュアンドキャリージャパン グローバライズとローカライズの優れたバランス 国を越えて教え合い協力する文化の中で人が育つ
2030年、海外市場に活路を見出す企業は少なくないだろう。その時、どんな経営のあり方が理想なのか。また、そのための人材育成はどうあるべきか。グローバライズとローカライズをうまく組み合わせて事業展開するメトロキャッシュアンドキャリージャパンに、そのポイントを聞いた。
現地法人の自由度を高め顧客目線でのビジネスを実現
メトログループ(本社:ドイツ)は、32カ国2,200店舗以上の小売業や卸売業を展開する世界有数の流通チェーンである。その中核となるのが、メトロキャッシュアンドキャリーで、29カ国700店以上の店舗を持つ。メトログループの日本法人であるメトロキャッシュアンドキャリージャパン(本社:東京都品川区。以下、メトロジャパン)は、2000年に設立され、飲食店や食品小売店などの食のプロを対象にキャッシュアンドキャリー(C&C:現金払い&持ち帰りの卸売)の大型店「メトロ」を全国で9店舗展開している。
グローバル企業の中には、経営トップが本国から派遣され、本国の意向に基づいて現地法人を運営するところが少なくない。これに対し、メトログループは、グローバル企業のスケールメリットを活かしながら、現地法人の自由度を高めることで現地に根差した経営を行っている。
同グループでは、「食のプロのさまざまなニーズに応える高品質な商品を低価格で提供し、顧客のビジネスをサポートすること」を世界共通のミッションとして掲げているが、具体的な品揃えについては、現地法人に一任している。また、世界共通の6種類の自社企画ブランド(以下、PB)を持っているが、商品開発は現地法人が独自に行っている。石田隆嗣社長は、「“食文化”という言葉に象徴されるように、食の嗜好は地域によって異なり、求められる食品も地域ごとにさまざまです。したがって、それぞれの国で扱う商品は現地法人が選んだり開発したりするほうが、地域のお客様のニーズに応えやすいのです」と、その理由を説明する。ちなみにメトロジャパンが取り扱うPBの90%は日本国内で開発したもので、国内総売り上げの17%を占める重要な商品グループに育っている。この他、店舗のフォーマットや運営方法についても、ベースは世界で共通だが、地域の顧客の利便性などの観点から、独自で変更を加えることも認められている。
「重要なのは、“お客様の役に立つ”という発想です。メトログループとしての基本的なルールはありますが、お客様の目から見て変えたほうがいいという点は、現地法人の判断で変えられます。こうした柔軟性が当グループの特徴であり、強みなのです」と石田社長は語る。