OPINION 2 日本企業の弱さは、同質性にあり 2030年 労働力人口減少時代に 人が採れる会社、採れない会社
2030年、現在よりも約950万人の労働力人口が減る。大学生の就職難がニュースになる昨今では、人が採れなくなるといわれても、ピンとこない人が多いかもしれないが、そうした未来は確実に来る。その時、企業は、女性や高齢者、外国人といった、多様で制約のある働き方をする人材の力を活用するしかない。どうしたら、その道が拓けるのか。雇用や就労、少子高齢社会に詳しい松浦氏に聞いた。
労働力人口の減少は待ったなし
──これから2030年に向かって、労働・雇用環境にはどのような変化が起きるとお考えですか。
松浦
まず確実にいえるのは、少子高齢化がさらに加速し、労働力人口※が劇的に減るということです。労働政策研究・研修機構の最新の推計によると、2030年の労働力人口は2010年より954万人減少する(ゼロ成長の場合)と予測されています(図1)。今は若者を中心にまだ就職難の印象が強いので、労働力人口が大きく減少するといわれてもピンとこないかもしれませんが、企業が何の手だても講じなければ、そう遠くない将来に「人が採れない」「こんなはずじゃなかった」という状況がやってきます。
──他には、どんな変化が。
松浦
労働力人口が減るということは、国内の市場が細るということでもあります。これまで国内市場だけで勝負をしていた業種も、海外に出ていかざるをえなくなるかもしれません。すでにグローバルで闘っている業種も、競争はさらに過酷になっていくでしょう。そうなると、どの業種・企業にとっても、優秀なグローバル人材の獲得や育成がより重要になってきます。また、国際競争において問題になるのが、日本国内で働く労働者の賃金水準が、中国、インド、タイといったアジアの他の国々に比べると、圧倒的に高いことです(図2)。世界のどこでもモノをつくること、売ることができる時代に、高い賃金水準のまま国際的な競争相手と伍していくには、従来の大量生産、大量販売というやり方は通用しないでしょう。そうなると、付加価値で勝負するしかありません。潜在需要に対応できるような新しい商品やユニークなサービスを開発することで、高い付加価値を得られるようなビジネスモデルをつくるしかない。
──そのためには“人”が必要。
松浦
ええ。意欲・能力の高い人材、創造的な人材を獲得し、育成・活用していくことで、高賃金というマイナス要素を埋めなくてはいけないというのが、2030年に向けての人事の課題ということになります。
──グローバルでの競争に勝つために、より意欲・能力の高い人材が必要なのに、労働力人口はどんどん減ってしまうという……。
松浦
これまで、多くの日本企業は終身雇用をベースに、長時間労働も転勤も厭わない男性社員の中から中核人材を選び、育ててきましたが、労働力人口の減少によって、「いつでもどこでもスタンバイできる男性社員」という母集団自体も大幅に減ってしまいます。