OPINION 1 人事部不要論と人事部機能転換論 2030年に残るのは「戦略のパートナー」としての人事
経営のグローバル化・価値観の多様化がますます進展していくことになる2030年。「戦略のパートナーとしての人事部」になるべきだという主張は、よく聞くが、戦略人事とは何か。それは従来の人事機能とはどのように違っているのか。そして、どのように人事はそこに向かっていけばいいのかを、内藤氏に聞いた。
マクロトレンドと「人事部改革論」
──まず、2030年に向けて、人事部を取り巻く環境はどのように変化していくと見ていますか。
内藤
次の3つのトレンドを踏まえておくべきだと思います。(1)グローバル化が進む:日本国内では人口が減少していき、それに伴って必然的に経済活動や消費市場も縮小していきます。他方で世界的には人口の大幅な増加が見込まれることから、企業の「成長」のためには、グローバル化への対応はあらゆる業種で避けられなくなっていきます。(2)一層の経営効率が求められる:グローバル化が進めば、おのずと意思決定も市場に近いところで行われるようになり、その結果、ヒト・設備・カネといった経営資源が世界に効果的に配置されるようになります。これをどうやるかだけではなく、いかに「効率的」に束ね、マネジメントしていくのかが、人事を含む経営管理の課題となっていくのです。(3)労働力の「価値観の多様化」が進む:労働力の多国籍化、女性の活躍や労働者の高齢化、雇用形態の多様化など、さまざまなファクターが価値観の多様化を促していきます。本来であれば人事部はこのようなトレンドに待ったなしで対応していかなければならないのですが、実際には人事部をめぐる視線は厳しいのが現状です。というのも、1990年代後半から、成果主義が期待したような結果を生み出さなかったことを契機に「人事部改革論」が始まりました。その議論から、いまだに脱却できていないからです。
──人事部改革論とは、どのような考え方でしょうか。
内藤
人事部改革論とは、「人事部不要論」と「人事部機能転換論」の2種類に分けられます(図1)。不要論の中には、人事機能をラインに分散的に権限委譲していくべきだとする考え方と、社内の人材需給は現場に任せることでおのずと需給メカニズムが働くはずだとする考え方の2つがあります。