新春特別対談 経営型人事のあり方
2030年を見据えて人事はどうあるべきか。規模は違えど、日本を代表するITベンチャー企業であるソフトバンクとサイバーエージェント。2社の急速な成長を人事面で強力に支え続けてきたお二人に、変革の時代に、人事のあるべき姿について語っていただいた。
スピードに対する大きな危機感
──お二人は互いの会社をどうご覧になっていますか。
青野
今、一番ビビッドに人事制度を仕掛けていっている会社がサイバーエージェントだと思います。理念や考え方を打ち出している企業はありますが、それを実際に現場まで巻き込んでいる企業はサイバーエージェントくらいではないでしょうか。 また、学生さんにサイバーエージェントの採用プロセスについて話を聞いて、「いい採用やってるな」と。敵ながらあっぱれ、という感想を持っていました。
曽山
我々は、ベンチャー企業の模範だと思ってソフトバンクを見ています。孫社長も、「300年企業になる」「情報通信革命で人々を幸せに」などと、ビジョナリーで象徴的な存在ですし。人事制度や施策の中でも、日次決算※1や、新規事業提案制度のイノベンチャー制度、社外の人を巻き込んでのソフトバンクアカデミア※2など、今までにないチャレンジを次々となさっていて、いつも注目しております。「ベンチャー」は、人数や売り上げ規模ではなく、「挑戦、チャレンジである」ということをいつも感じさせられます。
青野
お互いにほめちぎってますね(笑)。ソフトバンクは、ベンチャー気質を大事にしていますが、ベンチャーであり続けることは大変です。スプリントも含めるとグループ連結で約6万8,000名になり、平均年齢もどんどん上がっています。2005年に日本テレコム、2006年にボーダフォンと、大型のM&Aを繰り返し企業文化も混在しています。新しい施策を打とうとしても、まずは組織の融合に注力せざるをえないところがある。ですので、やりたいことは山ほどあるのですが、なかなか一気に展開できない不甲斐なさもあって。サイバーエージェントやヤフーが新しい施策を次々と展開しているのを横目に見つつ、猛烈な危機感を感じています。
曽山
青野さんもそんな危機感をお持ちなんですね。
青野
あるある。全然動けていない、という危機感は強いです。
曽山
サイバーエージェントも従業員は増えています。今グループで5,000人を超えましたので、スピードを速めていこう、というのはいつも言っています。一方で、いろいろな会社が集まっているからこそ、受ける刺激もありますよね。私自身、グループ会社の経営陣から学ぶことも多く、それをサイバーエージェントの経営に活かすことも多々あります。
変化に強い人材を育む環境づくり
青野
僕がソフトバンクの人事に入ったのは2005年。4期連続赤字が続き、倒産寸前といわれていた時期でした。曽山さんが人事になったのも2005年なんですね。
曽山
はい、入社したのは1999年です。設立2年目、社員数約20名という頃で社員番号は27番です。それから6年間、企業向け広告の営業をやって、2005年に人事になったのです。
青野
会社が大きくなっていく時にいると、本当にいろんなことがありますよね。
曽山
そうですね。会社の経営状況によって、離職率が上がったり、下がったり……。今は10%弱で落ち着いています。